タイトル「ひろしま 都心のあした」
  パート 2  社会実験

歩車共存 試みスタート
Photo
社会実験を知らせる横断幕の下で、PRのチラシを配る参加者たち(広島市中区の本通り)

 ヒント探る場/もっと提言を

 歩きやすい都心づくりに向け、歩行者と自転車、車の共存をめざす社会実験が二日、広島市中区の本通りかいわいで始まった。二十九日までの一カ月間、駐輪代(百円)を返す買い物駐輪券の発行や「歩車分離」ゾーンの明確化、分散型駐輪場の仮設などで、道筋を探る。

 初日は、市や地元商店街などの約二十人が実験内容のPRで街頭へ。英語で「歩行者優先」と書いた黄色のコート姿でアーケードや路地裏に散らばり、チラシを配った。

 この日は、あいにくの雨模様で、自転車の利用者はまばら。市の清水俊介・新たな道づくり整備担当課長は「実験中に、交通データや市民の声を集め、都心の回遊性アップにつなげたい」と話していた。

 本通りを自転車で通りかかった南区のフリーター上野大さん(27)は「通りから離れた市営駐輪場は不便。それぞれの店の責任で、軒先やビルのすき間とかに、身近な駐輪スペースをつくってほしい」と望んでいた。

2004.2.3
期待や注文 各界6人に聞く
 「歩車共存」の都心をめざし、広島市中区の本通りかいわいで2日始まった初の社会実験に、どんな成果を望むか―。実験プランを描く「市都心回遊ゾーン創出社会実験協議会」に参画した、業界団体や特定非営利活動法人(NPO法人)などの委員6人に聞いた。

小島光治
街づくり ソフト鍵

 国土交通省「社会実験の推進に関する懇談会」委員で、タウン誌を発行する小島光治さん(54) 都心のまちづくりは、ソフトが鍵だ。道の使い方一つで、がらっと変わる。頭の固い行政には、社会実験が薬。市民は、どんな道が歩きやすく、楽しいか、どしどし意見を言えばいい。

熊谷憲二
歩きにくさ原因は

 佐伯区で高齢・障害者の外出支援をしている「らくらくえんオフィス協議会」会長の熊谷憲二さん(67) 道路は、紙芝居屋さんが来れば劇場、行商なら市場に変わる。人間のための道路空間なのに、今はクルマが王様気分。歩きにくさのハードルは何か、感じ取る一カ月間にしたい。

川口隆司
将来論議なく心配

 安佐南区で障害児などを支援するNPO法人「ひゅーるぽん」代表の川口隆司さん(42) 都心の将来像の論議をしないまま、自転車だけに我慢を強いる実験になりそうで心配だ。場当たり的に終わらせず、どんな人でも移動しやすい空間をつくるヒントを見つける機会になればいい。

若狭利康
利便・安全どう両立

 都心のにぎわいづくりに取り組むNPO法人「セトラひろしま」代表の若狭利康さん(47) 利便性と安全性をどう両立させるか。都心の交通の一部にだけ手を付ける今回の実験が、効果があるか疑問だ。市民と行政が一緒になって、都心のグランドデザインを考える場が必要だと思う。

原田志朗
駐車自粛守れるか

 広島県トラック協会常務理事の原田志朗さん(61) 配達、集荷の荷さばきは繁華街に付き物。サービス業だし、やれと言われれば、分秒刻みで路上荷さばきもする。荷さばき駐車の自粛時間帯を延ばす実験ルールが、無理なく守れるものかどうか、しっかり見極めたい。

望月利昭
駐輪券反応参考に

 市中央部商店街振興組合連合会理事長の望月利昭さん(61) 本来は自転車のお客さんも大事なのに、駐輪のマナーの悪さなどが長年の悩みだった。駐輪代分をお返しする今回の手法の反応を参考に、歩行者にとっても心地いい、「自転車族ウエルカム」の商店街への道筋を見つけたい。