タイトル「ひろしま 都心のあした」
  パート 2  社会実験

    ■ さきがけ ■
     中心部に歩行者優先ゾーン


研究会が描いた
都心500メートル圏の交通イメージ
Photo

 2年前に研究会提言 回遊性向上狙う

 広島の都心五百メートル圏は、自動車の乗り入れを抑え、歩行者優先ゾーンとする―。今回の社会実験の狙いを先取りする提言が、実は二年前に発表されている。題して「広島の都心改革と交通共生」。企業や行政の反応も予想以上に好評で、都心に目を向けるさきがけとなった。

 都市計画の研究者らでつくる広島都市圏グランドデザイン研究会(会長・杉恵頼寧広島大大学院教授、六人)がまとめた。中区の鯉城、相生、中央、平和大通りに囲まれた五百メートル四方は、通過車両を排除し、区域内に用のある車のみがゆっくり走る。日中の荷さばき車両は、進入路を限定。荷さばき専用駐車場を複数確保する。

欧州がお手本

 相生通りは歩行者と、路面電車とバス、タクシーの公共交通機関だけが通行する「トランジットモール」とする。広くした歩道にはオープンカフェや、専門店が軒を連ねる。

 歩行者空間の創出で、にぎわいを取り戻したヨーロッパの都市がお手本だ。都心までの公共交通網や周縁の駐車場、通過車両のための道路などを整備する必要がある。

 「都心の機能がどんどん郊外へ出ていく。じゃあ都心はなくなってもいいのか。歴史的な営みが集積した都心の多様性を再評価する時機だと思った」。メンバーの一人、中国地方総合研究センターの主任研究員、佐藤俊雄さん(48)が説明する。

車両減に支持

 交通や都市計画、商業の活性化…。これまで行政も民間もばらばらに考えてきた施策を、まちづくりの発想で編み直す作業だったという。

 当時、提言を基に開いたシンポジウムで感想を募った。五百メートル圏の回遊性向上策で「歩行者優先空間の整備」が、二キロ圏の活性化策では「車の流入を減らし、公共交通中心とする」が最も支持を集めた。参加者は企業人と行政マンが半々。現実をよく知る人たちが、提言を「理想論」と切り捨てなかった。

 これまでに、提言のパンフレットは約三千百部、背景を説き起こした冊子は千六百部売れた。中国総研の刊行物の中では飛び抜けて多い。

「妥協点探れ」

 これから高齢化は進み、人口は減る。環境への負荷は減らしていかねばならない。となると、車に頼る郊外型構造から、人間優先の都心再構築へ―との考えは、都市計画家の間では異論がない、と佐藤さんはいう。

 今回の社会実験は、自動車の乗り入れ規制も検討しながら、調整の時間が足りず実現しなかった。佐藤さんは「車の利用者と正面衝突するのでなく、進入時間の限定など妥協点を探りながら、一歩ずつ進んでほしい」と語る。

2004.2.4