タイトル「ひろしま 都心のあした」
  パート 2  社会実験

    ■ 「本ブラ」同行 ■
    わがまち感覚もっと育て  市民が点検

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社会実験中の本通りを観察して歩く「たつじんくらぶ」の、左から吉原さん、西広さん、小谷さん(広島市中区)

 積極的なPR期待/駐輪スペースあちこちに

 「社会実験中の本通りをぶらぶら歩いてみます」。取材班にメールをくれた中高年グループ「たつじんくらぶ」(八十五人)の吉原通庸(みちよ)さん(57)=廿日市市=たち三人の「本ブラ」に六日、同行した。

話の種が多い

 人生の達人に暮らしの知恵を学ぼうと、グループは十年前から広島市内で異世代交流を重ねている。「都心の本通りに、交流の場を開くのが夢」と主宰する吉原さん。新興の郊外型店と違い、都心部の老舗や街並みには話の種になる思い出や文物が多い、という。

 待ち合わせのデパートから出た途端、吉原さんが「あれ、違法駐輪ですよね」。店先の電話ボックス脇に自転車が五台並んでいる。自転車によく乗る小谷寿子さん(46)=広島市西区=は「でも便利なのよね。あんなふうな駐輪スペースをあっちこっちに造れないのかな」。そばで西広邦子さん(60)=南区=がうなずく。

 道すがら、三人の本ブラ談議が進む。

 「よそから来た友達を本通りに連れ出して、広島って高級な店が多いのねって驚かれると、私まで誇らしかった」

 「近ごろ若者向けの店が増えて、中高年は近寄りにくい感じ。いくら歩きやすくなっても、魅力がないとねえ」

 「でもね、娘とそんな店に入ると結構面白いのよ。意外と、私好みの物があったりして…」

 会話の途中で、西広さんが知り合いに出くわした。「本ブラは、こういう偶然も楽しみなんよ」

「普段と同じ」

 小雪交じりの風が、アーケードに吹き込む。本通りを南に下り、袋町の市まちづくり市民交流プラザで一息入れた。

 実験地を歩いた感想は、三人とも「PRが足りない」。「買い物駐輪券の協力店を知らせるステッカーが地味」(小谷さん)、「自転車族が増えれば地球温暖化ガスが減るとか、環境を守る意義も説けばいいのに」(吉原さん)。西広さんは「垂れ幕以外、いつもの風景と変わらないし、実験中の実感がわかない。広報したの?」。

 市内全世帯に配る広報紙で、市が社会実験のあらましを伝えたのは今月一日、実験スタートの前日だった。

 「都心の雰囲気って、街への愛着感とか県民性まで表れる。だから、街の顔」という吉原さん。「来てよし、住んでよしの広島づくりには何が必要か、社会実験で繰り返し問いかけ、市民のわがまち感覚も育ててほしい」と願っていた。

2004.2.10