通勤用 対策が課題
止めてはいけない所に自転車が止まっている場合、たいてい数台が並んでいる。一台もない場所に、初めに止めるのは結構勇気が要る。
「割れ窓理論」。割れたガラスが一枚でも放置されると、ビルが荒れ、やがて地域が荒れるという理屈である。違法駐輪も似たところがある。
広島市の都心の違法駐輪で、「初めの一台」は誰か―。買い物客のマナーばかり強調されがちだが、都心で働く人たちの通勤用自転車の実態にも問題がありそうだ。
返還のほうが安い
「この一年半、ずっと路上(駐輪)よ」。本通りに近い美容室で働く女性(20)は屈託ない。市営駐輪場の月ぎめ利用料は千円。違法駐輪の自転車を撤去された時、返還に必要なのは二千百円。「今まで二回持っていかれたけど、駐輪場に入れるより安いし。店から交通費も出んしね」
市には、建物に駐輪場の設置を義務付ける条例がある。だが対象は、面積四百平方メートルを超える百貨店やスーパー、五百平方メートルを超える銀行などに限られる。条例のできた一九八六年より前の建物には適用されない。小さな事務所や店舗は、それぞれの努力頼みである。
本通りと金座街のつじにあるスターバックスコーヒー広島本通り店。商店街の東南の玄関口にあたるせいもあり、店舗前の駐輪に頭を悩ませている。「だからこそ、従業員は駐輪場に入れるよう心がけています」。市内七店を統括する三上徹さん(38)が話す。
本通り店で働く社員とアルバイト延べ十五人は、ほとんどが自転車通勤だ。朝一番の当番の出勤は七時前。すぐ近くの西新天地駐輪場が七時に開くのを待って、入れる。金、土曜の営業は午後十一時まで。駐輪場は十一時に閉まるので、交代で自転車を出しに行く。
「少し面倒だけど、近いからこそできる。駐輪場まで距離があると、物騒で、女性の従業員には強く言えない」と三上さんは打ち明ける。
キャンセル待ちも
市営駐輪場の営業時間は、最も遅い東新天地が午前三時。残りの六カ所は午後九〜十二時にかけて閉まる。飲食店の従業員には厳しい時間帯だ。さらに、三カ所は月ぎめが満杯で、キャンセル待ちとなっている。
都心の放置規制区域内の放置自転車は千八百台余り。その外側の、平和大通り南側や流川・薬研堀など撤去されない地区の放置台数は三千八百台余り。多くが通勤用と想像できる。
都心で働く何人が自転車で通っているのか? 働く時間帯は? 月ぎめ千円は負担か? 女性でも安全な駐輪場の位置や施設とは? 買い物客向けに工夫を凝らすのと同じように、きめ細かく分析して従業員が駐輪場に止めやすい環境を整える努力が、「初めの一台」を減らす。
2004.2.11
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