タイトル「ひろしま 都心のあした」
  パート 2  社会実験

    ■ 福岡の試み ■  違法駐輪 全国ワーストワン
      市民が発信 柔軟アイデア

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福岡市天神地区の放置自転車追放キャラクター「チャリ・エンジェルズ」

 啓発アイドル 若者が的

 ピンクに緑、黒のかつらとホットパンツの派手なコスチューム。福岡市の放置自転車追放キャンペーンのアイドル「チャリ・エンジェルズ」だ。一番の繁華街、天神で違法駐輪を整理したり、駐輪場を案内したりする。

 地下鉄と駐輪場の定期を合体した「乗っちゃりパス」、歩道を活用した路上駐輪場、三時間無料駐輪実験…。同市の駐輪対策は盛りだくさんだ。地下街や百貨店の地階と直結した千台規模の駐輪場も三月に開業する。

 きっかけは国の放置自転車台数調査。ずっと成績の悪かった天神地区が二〇〇一年度、ついに全国ワーストワンになったのである。市は昨春、全国でも珍しい自転車対策課(八人)を新設。自転車利用総合計画も作り、利便性、環境と健康へのメリットなどから、自転車を「都市交通の有効な手段」と位置付けた。

利用6割20歳以下

 天神の自転車利用者の六割は二十歳以下だった。役所と最も縁の薄い年代である。相談を受けたコミュニティーラジオ局、天神エフエムの局次長、竹石明弘さん(32)は「自転車を絶対悪者にはするまい」と考えた。

 「チャリ・エン」は、地元デザイナーが描いた駐輪場地図のイラストが始まり。行事などに本物がいた方がいいと誕生した。「露出度が高い」と苦情も来る。しかし自転車対策課の水上義喜課長は「役所仕事じゃダサくて、若者は相手にしない」と意に介さない。全国から取材も相次ぎ、デザイン業界の賞も取った。

 竹石さんは、ライターやカフェ経営者ら天神に一家言ある仲間を集め、勉強会をつくった。「使いたい駐輪場」を探るため、照明やBGM、ビジネス可能性などを学んでは市に打ち返した。「自転車を切り口に、まちづくりを考える場になった」。今は、「駐輪対策の参考に」と各地から声がかかる。

シンポや実態調査

 十日には、市民、企業、行政の二十人が発言者として参加したシンポがあった。「自転車利用ベスト1の福岡に」がテーマ。特定非営利活動法人(NPO法人)「はかた夢松原の会」が中心となった実行委が開いた。

 天神での自転車利用実態を調べた九州大大学院生後藤孝行さん(23)は、「違法駐輪する側も、自分なりに場所を選んでいると分かった」と話す。止めていい場所の見極め、年代に応じたマナー教育のプログラム…。そんなきめ細かな作業は、NPO向きだと考える。

 天神の自転車対策の効果はまだ見えてこない。ただ、多くの市民が発言し、行動し、それが街の魅力の再発見につながっている。広島でも、「行政の押し付け」と文句を言うだけでなく、アイデアを出してみたらどうだろう。

2004.2.14