■人の動き調査必要
都心内の車の問題をどう考えるか。広島大大学院助教授の奥村誠さん(42)=地域計画=は「都心に駐車場をどんどん造れ、という考えは間違っている」と言う。
戦後ずっと、都市は地方から人を呼び込み、郊外へ膨張した。車に頼るのが当たり前の生活が主流となった。しかし今後、人口は減る。奥村さんは「長期的には、車がないと暮らせない郊外から、公共交通機関の蓄積がある都心部へ、人口を徐々に誘導していくべきだ」と説く。
短期的にはどうか。車の流入量をできるだけ抑え、今ある駐車場をいかに有効に使うかを考えるべきだ―というのが、奥村さんの主張だ。
大型店を建てるとき、駐車場需要をはじく計算式がある。都心に売り場面積二万平方メートルの店舗を設けるとする。郊外店並みにお客さんの六割をマイカー客と見込むと、三万七千平方メートルの駐車場が必要となる。
「駐車場だらけの街になってしまう。現実にはありえない」と奥村さん。だから都心は、駐車場が足りないことを前提に、戦略を練らなければならないという。
限られた駐車場は、受け入れなければそっぽを向く人―福岡や神戸に行かず、わざわざ広島に来てくれる島根や山口などの人を優遇する。「買い物をすれば○時間無料」の上限制から、滞在時間が長い方が割安になる料金システムに変える。車以外で来る人への、サービスも要るだろう。
駐車場の位置も重要だ。初めての人にもわかりやすい幹線道路沿いで、路面電車やバスに接続しているのがいい。都心内をうろついたり、通過したりする車を無くすため、一方通行をうまく組み合わせて、車の流れを整理する手もある。
奥村さんは、来訪者の行動調査をする必要があるという。どこから、誰が、何をしに来て、どう過ごしているか。そこから、広島の都心の魅力や物語性を生み出すヒントが見つかる。
「今は各駐車場の使われ方すらわからない。駐車場のあり方や人の動きなどについて、必死で考えている大型店に負けないよう、都心全体で考え、戦略を練らなければならないのです」
「P」案内板廃止 需要少なく4月広島市
広島市は四月から、市中心部の「駐車場案内システム」を廃止する。時間貸し駐車場の空き情報を運転中のドライバーに知らせ、交通円滑化を図る狙いで十三年前に導入。その後、一帯の駐車場が増え、慢性的な満車状態が解消されたため、役割を終えたと判断した。
中区の約百五十ヘクタールを紙屋町、八丁堀、袋町、三川の四エリアに分け、道路脇に設置した案内板によって、ブロックごとに「満」「混」「空」の三段階で表示。空き駐車場の方向を示す進入路案内板とともに、駐車場探しの車を誘導する。
約六億五千万円で整備し、一九九一年六月から運用開始。市営や民間経営の四十二施設が表示対象になっている。
市の調べでは、一帯には現在、表示されない駐車場を含めて百四十六カ所、約一万三千台分が整備されている。システムができた当時と比べ、収容量は約七千台増え、ほぼ倍になった。
そのため、駐車場を探し回ることなく車を止められるようになった。市の二〇〇二年のアンケートでも、システムに頼っているのは回答者約千四百人の一割だった。
老朽化で改修時期を迎え、使い続けるには数億円の追加投資が必要。維持費も年間約千七百万円かかり、市は費用対効果が低いと判断した。新年度当初予算案に撤去費約九百二十万円を計上している。
2004.2.19
|