今回の広島市都心部での交通社会実験の柱の一つは、中区本通りかいわいの自転車と歩行者の関係の改善だった。手法について、辛口の注文が相次いだ。
■「臨時」2ヵ所や協賛店探し難航 市民参加 試みは評価
まず、歩道内での人と自転車の分離。幅の広い中央通りなど三カ所で路上にイラストを描いて、「人は建物側」「自転車は車道側」に誘導しようとしたが…。
違反には厳罰
「私以外、イラストを意識している人がいるとは思えなかった。誰も知らないのでは?」と安佐北区のパート従業員山田裕子さん(50)。東区の神社宮司杉井英彦さん(72)は「本通りへの自転車乗り入れを含め、違反を承知のルール破りには厳罰を」と厳しい。
使いやすい駐輪場を目指した実験も評判が悪かった。キャッシュバック方式の駐輪サービスは、「母が協賛店を見つけるのに苦労した」と南区、高校生末田真希さん(18)。南区の会社員佐伯一夫さん(33)も「協賛店を使う側に探させるやり方は、利用促進の妨げになる」。二カ所設けた臨時駐輪場も、「場所が分からなかった」という。
即撤去を主張
中区で駐車場を営む岡田宏一郎さん(58)は、出入り口周辺の駐輪に悩まされている。「一部を駐輪場にしたが利用はゼロ。違法に止めた自転車は、即撤去しかない」と言い切る。
同じ「即撤去」を主張する中区の不動産賃貸業徳本光子さん(66)は、「アメとムチ作戦」を提案する。「違法駐輪が多い場所は、逆にいえば止めやすい所。通行の邪魔にならないなら、料金を取る合法的な駐輪場にどんどん替えていってはどうでしょう」
料金制工夫を
「日常的にちょこっと違法駐輪する」という中区の自営業佐々木恭子さん(55)も、同じ意見。「駐輪できる場所はタイルの色で識別できるようにして、料金はいちいち徴収せず、事前にまとめて支払って自転車にシールを張る。取り締まりや撤去費用と比べると安いはず。将来は自転車購入時に義務付ければ、広島はエコの街になる」と夢を描く。
実験自体については、意義を認める声が多数を占めた。「けなしてばかりじゃ、前へ進まない。事前の市民へのPRに知恵と工夫を」と山田さん。
佐伯さんも「社会実験は、市民が体感、体験して政策を判断できるいい機会。『できることからやる』でなく、公共交通機関も巻き込んで、『できることは全部やる』気概で頑張って」と市にエールを送る。
2004.2.25
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