タイトル「ひろしま 都心のあした」
  パート 2  社会実験

    ■ 振り返って ■
      まず街の将来像描こう

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平日から込み合う、広島市中区の本通りかいわい。歩きやすい都心づくりの試みは始まったばかりだ

 広島市中区の本通りかいわいで展開された都心交通の社会実験は、二十九日で終わった。「歩きやすい都心」づくりに向け、どんな課題が浮上してきたのか。取材を通じて見えたこと、書ききれなかった街の声を基に、取材記者が話し合った。

(都心取材班 石丸賢、増田泉子)

PR不足 機運高まらず
実態分析 ルール作りを

  やる前から気がかりじゃったけど、PR不足は明らかじゃね。

  市の広報は、開始前日の「市民と市政」が初めて。本通りにほど近い、まちづくり市民交流プラザの人も知らんかったよ。不特定多数が集まる都心だし、県外客など初めての人にも分かるようにしたかった。

  実験で何をするか、それは何のためなのか。機運が盛り上がってなかったけえ、せっかくの実験から何がくみ取れるか、心配なよ。

  荷さばきの業者さんも困っとった。県トラック協会は実行委メンバーじゃったけど、協会に入ってない自営の人もいるもんね。

役割は縦割り

  本通りかいわいに、市のいろんな部署や県警の委託を受けた駐輪や交通安全の指導員がたくさんおってでしょ。実験を全く知らん係員もおっちゃった。目的はみんな、「歩きやすい都心づくり」なのに、役割は縦割りなんじゃねえ。

  キャッシュバック方式の買い物駐輪券も、評判はいまいち。周辺で開かれるイベントや講座なんかでも会費の割引券に使えれば、相乗効果があっただろうに。

  二カ所の臨時駐輪場はガラガラ。朝十時から夜八時までの営業じゃ、働いとる人が利用できんかった。

  駐輪にしても、荷さばきにしても、実態がつかめていない。使いやすい時間帯とか場所とか、細かい分析に基づいてルールを作らんと、押し付けになる。誰にも支持してもらえんよ。

  そこは福岡がうらやましかった。自転車利用者の調査を、NPOが子どもや学生と一緒に取り組んどった。行政に任せちゃおれんいう気概を感じたよ。議論百出で、調整が難しい問題なのに、楽しそうに見えた。

  あちこちで、都心の将来像とかビジョンがほしいと聞いた。市の道路交通局長の池上(義信)さんは「教科書のない時代だから、行動を起こして探っていく」と言っていた。でも、「どんな街にしたいか」を決めないで、実験で手段を探る意味がどれぐらいあったのかな。

  車の乗り入れ規制は、今回できんかった。じゃけど、「長期展望があれば、打つ手も変わってくる」と、当の駐車場関係者が言ったのが印象的じゃったよ。

失敗生かそう

  国土交通省のアドバイザーのドイツ人が視察に来て、「ヨーロッパの都市も歩行者空間の整備に十―二十年かかった」と市の職員を励ましたらしいよ。実験の失敗は、成功のもとじゃからね。

  今のままじゃ、「歩きやすい都心」に総論賛成、各論反対いう感じでまとまりにくい。実験を分析して終わりじゃなくて、次回はどう展開するかを考えんと。

(パート2 おわり)

2004.3.2