■企画・運営 市民主体で ―行政は黒子 陰で支えて
国土交通省は、広島都心の川辺で占用施設の設置や経営への民間参入を二十三日付で認めた。既に試行している中区の京橋川右岸などに、オープンカフェのある風景が根付くだろうか。市の水の都ひろしま推進協議会でオープンカフェ通り専門部会長を務める福田由美子・広島工業大助教授(39)は、水辺の事業を企画、運営する市民主体の組織が必要だと指摘する。
国交省の方針変更は、水辺で都市の楽しみ方をつくり出したいとした広島市などの要望に応えた。中国新聞社の読者アンケートでも、水辺のカフェや屋台を望む声は多かった。福田さんは「きれいになった河岸を生かそう、広島の新しい風景にしようという意識は、かなりの市民が抱いている」とみる。
住民の理解大切
ただ、先進地域である京橋川沿いはマンション建設により人口が増えている。住民との折り合いが不可欠になる。玄関を開けたらすぐに公共空間というのでは、暮らしにくい。
実現の道筋をどう描くか。福田さんは、「都心の暮らし」の中に答えを求める。公共サービスなどの利便性に加え、都市の楽しみも大きな魅力のはず。「郊外だと車で喫茶店へ行かなきゃいけないところを、ちょっと水辺へ出てお茶を飲んだり、本を読んだり…」。都市文化にどっぷり漬かった団塊世代が、高齢者に仲間入りするのも追い風になる。
第三の組織必要
来訪者、住民双方に心地よい空間に育てるには、互いの配慮と試行錯誤が要る。「あらかじめダメなことを決めるより、そこにふさわしい振る舞いが自然に醸成されるのがいいですよね。ベンチだけだと弁当がらを捨てるのに、カフェのテーブルだと自分でふいていく人がいるような…」
実行に移しながら、不都合があれば修正、改善を重ねる。こんな手法で進めるには、行政でも、地元住民グループだけでもない「第三の組織」が要ると福田さんは言う。小さな店から企業まで含めた事業者、住民、民間非営利団体(NPO)など、やりたい人の集まりだ。
「広島の新しい都市風景が欲しい」という市民の声が応援団になる。市民合意があるから、難癖もつきにくい。行政は、市民をその気にさせたり、関連情報を出したりする巧妙な黒子であってほしい。
国の規制緩和は、三年間に限った「社会実験」である。「今、市は仕組みをつくるのに必死だけど、大事なのは五年、十年先に広島の水辺がどうなっているか。そのためには、実験中に『第三の組織』をつくらないといけないと思います」
2004.3.24
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