■「命名運動」 連帯生む ■安全基準 変化の兆し
「地域の遺伝子」とも言える広島都心の魅力として、誰もが認める川。水辺にもっと近づきたいという人々の思いや営みを、規制緩和の動きと合わせて報告してきた。上げ潮にある民と官の意欲や動きが、うまくかみ合って加速するには何が必要か。取材記者が話し合った。 (都心取材班 増田泉子、門脇正樹)
民の盛り上がり
増 川や水辺への一般の人たちの思い入れは、予想以上。十数年前に「川を何本か埋めて駐車場を造れ」という声があったのが、うそみたい。
門 川沿いに名前を付ける運動では、三月いっぱいだった命名柱の設置期限を、役所が延長してくれた。当然とは思うけど、うれしい。本川左岸(中区)のポプラでは、今までバラバラに思いを寄せてた人たちが連絡を取り合って、ポプラの周りに来る人向けに週末にコーヒーを振る舞う計画を立ててます。
増 水辺ネットワークができよるね。京橋川(中区)のフットパスは、通勤ルートになってきた。花見客のごみの持ち帰りもルールになり始めたんと。「きれいにした場所を、汚くする人間はおらん」いう声を聞いた。
門 雁木(がんぎ)タクシーは、一日に十人程度の予約があるらしい。発着している京橋川沿いのホテルも、綱取りの人を出したりして協力してる。採算や安全性では、心配する声もあるんだけど…。
官も頑張る
増 安全性については、「水辺で盛り上げようとしている時期だから」という行政の一言が大きかったって。あれで踏み出せたと、メンバーが感謝しとったよ。
門 三月に入った途端に、水辺のイベントが花盛りだったけど、どこにも市の職員が顔を出してて、ちょっと驚いた。一生懸命な人も多いですね。
増 国土交通省の人からも興味深い発言を聞いた。「水辺を楽しもうとするとき、安全を言い出したらキリがない」と。一定の基準を守れば、後のリスクは個人が負う―という共通認識が要るいうこと。「ダメなものはダメ」という雰囲気は変わりつつあるね。
民と官の境目
門 そうは言っても、市民と行政の思惑違いはいろんなとこで見受けた。せっかく定着しかけた水辺のコンサートは、年度替わりに空白ができてしまった。
増 オープンカフェだって、行政はイベントみたいにとらえていた節がある。規制緩和で営利行為が認められたということは、暑い夏も寒い冬もお客さんに来てもらわんといけんのじゃけえね。始める前からやっちゃいけんことを決めるやり方じゃ、事業者はなえるね。
門 同じように規制緩和を要望していた、大阪の道頓堀の商店主から広島市役所に電話があったんだそうです。「広島ではどうやってもうけるんですか」という質問。浪速商人の勢いを感じてしまった。
増 水辺という場所自体が、民と官の境界であり、公共空間。「誰がやるか」を考えるときも、互いに乗り入れたり、いい意味であいまいにしておいたりすることが、ものすごく大事じゃね。それが難しいんじゃけど。
パート3は今回で終わります。
2004.4.7
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