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★ SPECIAL ★「gaga(ガガ)―しあわせ」
 広島なぎさ高校 サラワク・スタディーツアー




広島なぎさ高(広島市佐伯区)の2年生11人は今夏、マレーシア・サラワク州の熱帯雨林でホームステイをしました。帰国後、生徒は先住民族イバンの人々との共同生活を基に小説を書きました。幸せとは何かを問い掛けるストーリー。この本は孤独死やいじめ、ニートといった日本で起きている問題についても考えるきっかけを与えてくれます。(増田咲子)

小説を手にする広島なぎさ高の2年生

生徒は研修旅行としてルマ・パンジン村に5日間滞在しました。生きているニワトリの調理、川での水浴び…。さまざまな体験を通して感じたことや現地取材を基にして書いた小説のタイトルは「gaga(ガガ)―しあわせ」。イバン語で「幸せ」を意味しています。

小説では、優樹という日本の高校生と、ガガというイバンの少年との交流を描いています。物語は優樹が授業中に居眠りし、夢の中でマレーシアのジャングルを訪れる場面から始まります。

優樹はニワトリを絞めるよう現地の人に勧められますが、怖くて逃げ出してしまいます。優樹はジャングルで出会ったガガに、16世帯が住んでいるロングハウスへ案内されます。ここでは近所の人も一緒になって食事をします。現地の人の温かさに触れました。自然と共生する大切さについても学びました。

やがて優樹は恐れていたニワトリの調理もできるようになります。日本で売られている鶏肉を思い浮かべ「ここにいても、日本にいても同じ一つの命をもらっていたことには変わりない」と気付きます。

村での生活に慣れてきたころ、優樹は夢から覚めます。電気やテレビがある生活、一人での食事など、優樹にとって当たり前だった生活が、これまでと違って見えるようになりました。虐待やいじめなどのニュースにも関心を持つようになります。みんなが笑って暮らせるようにするにはどうすればいいのか―と考えるようになりました。

小説「gaga(ガガ)―しあわせ」の表紙



小説は11月に完成しました。マレーシアへの研修旅行は1998年から続けており、帰国報告を小説にしたのは初めてです。物語にすることで、読者に登場人物とともに問題を共有してもらいと思ったからです。

小説はA5判カラーで55ページ。協力費500円で配布しています。イバン語の要約も添えています。問い合わせはなぎさ高の野中先生=電話0829(21)2137。


 参加した11人の感想はこちら>>

(下の写真の上にマウスを乗せると大きな写真をみることができます。)



マレーシアのジャングル。見上げると木々の間から太陽の光が差し込んでいました


ジャングルで食事した後、生徒はイバンの人々と記念撮影をしました


16世帯が暮らすロングハウスには共用の長い廊下があります。近所の人がおしゃべりしたり、昼寝したりします



11人の感想

  • 高田結衣(たかた・ゆい)さん
     ロングハウスでの最後の夜、ぼや騒ぎがありました。でも、イバンの人はまるで何もなかったかのようにいつもの笑顔で私たちを送り出すパーティーを開いてくれました。心の余裕が笑顔を生むのか、笑顔が心の余裕を呼ぶのか。それは分からないけど、「笑顔が持つ強さ」をあらためて知りました。一人の笑顔が、自然と周りの人の笑顔を生み出すのです。
     ロングハウスで生活している時は、携帯電話に触っていません。鏡で自分の顔を見ていません。イバンの生活にのめり込み、自然に溶け込んでいました。
  • 岩田皆子(いわた・みなこ)さん
     日本には「地域力」という言葉があります。地域の人とのつながりが大切だと言われています。私はイバンの人と暮らし、地域力の本当の意味を知りました。それはいつでも頼れて、お互いを尊重し合える関係を築いていることです。当たり前すぎて地域力という言葉さえもないイバンの人の暮らしは、ある意味恵まれているとも感じました。日本では家族と一緒に暮らせない人がたくさんいて、誰にも知られず亡くなる人もいます。一人一人が大切にされているロングハウスでは絶対にあり得ないことです。
  • 浅野友那(あさの・ゆな)さん
     こんなにも多くの緑に囲まれた体験は初めてでした。空を見上げると太陽の光に照らされた木々の葉が輝きを放ってとてもきれいでした。日本でこんなきれいな光は見たことがなく、自然の力を感じました。ジャングルでは歩いていても疲れを感じませんでした。コンクリートではなく土のありがたさを身にしみて感じました。
     イバンの人は、男性も女性も小さい子どももみんな元気でたくましかったです。マレーシアで生活して、日本の長所、短所が見えてきました。現実を受け止め、これからの生活に生かしたいと思いました。
  • 末田佳之(すえだ・よしゆき)さん
     入村の儀式でブタを殺しました。あの時のブタの鳴き声が忘れられません。自分を殺した者を呪うような叫び声でした。だけど、息絶えた後のブタの顔がどこか満足しているようにも見えました。自分で鶏を絞めた時もそうでした。生き物の命を奪った時の感触はとても大切なものを奪った感じでした。それなのになぜ満足しているような表情に見えるのか不思議でした。
     その答えはジャングルで昼食を作った時に分かりました。それは「命は自然の一部」だということです。森の中で竹でご飯を炊いたり、葉っぱで作ったお皿を使っていると、自然と人間が一つになったように感じました。ジャングルで暮らさなければ気づかなかったかもしれません。
  • 中村実咲(なかむら・みさき)さん
     ジャングルでは、道がなくて川を渡り、つるつるすべる急な坂もありました。登山の何倍も大変だったと思うけれど、疲れも吹き飛ぶほど、自然が美しすぎて感動しました。目的地に着くと、川で葉っぱを洗い、米をその葉っぱで包み、竹の中に入れて炊きました。イバンの人の豊かな知恵をたくさん見ることができました。私たちの代わりに誰かが食べ物を収穫してくれていることにあらためて気付かされました。
  • 柳崎文哉(やなぎさき・ふみや)さん
     ロングハウスで、とてもうらやましいことがありました。遊びやダンスが始まると、すぐにみんなが廊下に集まります。仲間外れはなく、知らない人がいれば必ず誰かが誘いに行き、輪になって楽しみます。本当にうらやましく、楽しかったです。それに、子どもから大人まですべての年代の人が何の違和感もなく、一緒に遊び、楽しむことができるのもイバンの人たちの良いところだと思いました。
  • 坂本祐里子(さかもと・ゆりこ)さん
     取材で子どもに将来のことを質問しました。「お父さんになりたい」「お母さんになりたい」と答えたので理由を聞くと、「尊敬しているから」と言いました。そんな言葉を親の前で言う子どもを見て素直だなと感じました。私たちもそんな素直さを見習いたいと思いました。
  • 岡田櫻子(おかだ・さくらこ)さん
     イバンの人はいつも元気で笑っていました。私が金づちで自分の足をたたいてしまった時、イバンの人はそんな簡単なこともできないのかという感じで笑っていました。日本だと「大丈夫?」と周りの人は不安な顔になるような気がします。私はもちろん痛かったけれど、イバンの人が笑っていたので笑えてきました。
     ロングハウスは一つの家族のようでした。いろんな人が家に来て食事するのが当たり前でした。お互いに信頼し合っているからこそできることです。とても平和だと思いました。
  • 玉田美樹(たまだ・みき)さん
     マレーシアに行く前、ロングハウスに住んでいる人たちは、自分たちとは違う「異国の人」だと思っていました。でも、日本人とは別にこれと言って変わっているところなどありませんでした。文化の違いで生活の仕方は違っていたけれども、人間としての根本的な部分はみな同じだと感じました。
  • 西山瑞歩(にしやま・みずほ)さん
     周辺散策で、コショウの木やゴムの木を見ました。森に向かう途中、ロングハウスの方を見ると、日本にはないたくさんの森に囲まれていて、自然の大きさが感じられてすごいと思いました。鶏を絞めました。「怖い」や「かわいそう」という気持ちではなく、ただ無心でした。この体験を通して食べ物に感謝の気持ちを持って生活していきたいと思いました。
  • 新谷涼太(しんたに・りょうた)さん
     近所の人が台所に来て一緒に食事するのが当たり前でした。こういう近所付き合いはいいなと思います。日本では、隣の人を知らないこともあります。イバンの人たちはみんな家族です。うまくしゃべれなくて、言われたことが分からない事もありました。そんな時、アパイ(お父さん)やインナイ(お母さん)たちはいつも笑顔で話し掛けてくれました。「心が通じ合った」と思うとうれしくて、心が温かくなりました。家族の一員になれた気がしました。たった5日間だったけれど、そんな気持ちになったのはイバンの人のおかげだし、自分も前向きにかかわろうとした結果だと思います。