トップページ
 関連記事
 連載
 特集
 賛同者メッセージ
 English
広島国際文化財団
 理事長挨拶
 事業内容
 募集要項
 募金のお願い
中国新聞
 原爆・平和特集
関連リンク
 中国放送
 広島県
 広島市
 広島平和文化センター
 広島平和研究所
 国連大学
 ユニタール広島
■特集 南アフリカ編 核廃絶への歩み
和解の心 ヒロシマ共鳴 '04/5/10

 核保有国から非核保有国へ―。南アフリカ共和国がたどった道は、地上から核兵器はなくならないと信じたり、あきらめたりしている世界の多くの人々に希望を与えるものである。

 南アの核保有は、白人政権のための「アパルトヘイト原爆」とも形容された。というのも、国民のための「安全保障」をうたいながら、実際には圧倒的多数の黒人が厳しい差別に苦しみ、国民としての扱いを受けていなかったからだ。

 核兵器廃棄への道は、アパルトヘイト撤廃への動きと歩調を合わせるように実現した。それは単なる偶然ではない。

 一九八九年にデクラーク大統領が就任した際、東西冷戦が終わり、周辺国を含め国際環境が大きく変わっていたことは事実である。

 だが、核廃絶に踏み切った要因はそれだけではない。より重要なのは、アパルトヘイト撤廃を求め解放運動を闘い続けてきたネルソン・マンデラ氏率いるアフリカ民族会議(ANC)との間で、アパルトヘイト法の廃止など話し合いによる合意が成立したからだ。

 黒人勢力を代表するANCは、核兵器を含む大量破壊兵器の開発・保有に早くから反対していた。全人種参加の民主的な選挙が実現すれば、ANCが政権に就くのは明白だった。デクラーク氏は国内事情からも、そして国際社会に復帰するためにも、核兵器の存在は「足かせにすぎない」と喝破したのだ。

 九四年に誕生したマンデラ政権は、世界中の大量破壊兵器の廃棄を通じて「地球的規模の平和と安全保障」を促進する政策を盛り込んだ。九九年にマンデラ氏を後継し、今年四月の総選挙で二期目の任期に入ったANC議長のターボ・ムベキ政権も核軍縮に精力的に取り組んでいる。

 ただ、過去の核開発の事実関係については未解明の部分が多い。例えば、白人政権とつながりが深かったイスラエルとの協力関係について関係者に尋ねても、明確な答えは返ってこなかった。

 デクラーク政権は核開発に伴うすべての書類を廃棄したとされる。が、ガイ・ラムさんのように書類は隠されているとして、発見に努めている学者やジャーナリストも少なくない。

 核軍縮に取り組む南アの立場は、外務省のホームページなどに詳しく紹介されている。が、それをめぐって世論を巻き込んだ議論は起きていない。核問題はなお一部の人たちの関心にとどまっているのだ。「核政策への反対がないのでやりやすくはありますが…」と、外務省の軍縮担当者は苦笑したものである。

 私たちが訪ねた大学や教会などでは平和教育に大きな関心を示した。

 広島と長崎、そして被爆国日本は、世界の人々に核戦争の悲惨を伝えることができる。南アは核兵器を廃棄することによって得たメリットについて、説得力をもって語ることができるだろう。

 さらに南アの人々には、アパルトヘイトによる歴史のわだかまりを超え、人種間の「和解」を求めようとする心が強くある。それは「報復ではなく和解を」というヒロシマの心と重なる。

 エイズをはじめ南アの現実は厳しい。だが、紛争防止や核廃絶実現に向け、私たちは多くの点で「希望」を共有できるに違いない。(田城)


MenuTopBack