広島国際文化財団が派遣する「広島世界平和ミッション」第四陣メンバー四人は、十月五日から十九日までロシアを訪れた。日本海に臨む軍港ウラジオストクをスタート。日本をはじめ欧米諸国が支援する退役原子力潜水艦の解体の実態把握を主テーマに、首都モスクワや氷点下のチェリャビンスクを巡った。そこで目の当たりにしたのは、米国との核軍備競争の揚げ句にソ連邦が崩壊、今では経済的、技術的理由から肥大化しすぎた核兵器の解体すら自力ではできない核大国の姿だった。「冷戦時代」の一方の当事者が直面する核解体の課題や障壁を、現地の軍縮問題専門家のインタビューなどを交えてリポートする。(文・岡田浩一 写真・野地俊治)
■ロシアの核年表
1943年 4月 ソ連科学アカデミーが、原爆開発の拠点としてモスクワに第2研究室(後のクルチャトフ研究所)を設立
46年12月 第2研究室の研究炉F―1が初臨界
48年 6月 チェリャビンスク郊外にあるマヤーク核施設の兵器用原子炉が初臨界
49年 8月 マヤークの再処理工場で抽出したプルトニウムを原料に、カザフスタンのセミパラチンスク実験場で初の原爆実験に成功
54年 6月 オブニンスクで出力5000キロワットの原発が運転開始
57年 9月 マヤークで高レベル廃棄物貯蔵タンクが爆発する「ウラルの核惨事」が発生
58年 8月 ソ連初の原潜ノベンバーが進水
59年 9月 世界初の原子力砕氷船が進水
86年 4月 チェルノブイリ原発4号基で炉心溶融を伴う爆発事故
91年12月 ソ連邦崩壊
93年 4月 トムスクのプルトニウム再処理工場で爆発事故
94年12月 第一次戦略兵器削減条約(START−1)が発効
2000年 8月 演習中の原潜クルースクがバレンツ海で沈没
03年 6月 モスクワ条約発効
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