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■特集 ロシア編 核大国の軍縮
ロシア科学アカデミー付属・国際安全研究センター軍縮紛争解決部長 アレクサンドル・ピカエフ氏(42)に聞く '04/12/2

 ■余剰核の管理課題

 ―ロシアの核解体の問題点は?

 核解体に伴って出る余剰核物質の管理が、全世界にとっても頭痛の種となる。高濃縮ウランは五百トンを米国へ送り、原発燃料などの商業用として加工する。プルトニウムはマヤーク核施設に新設した貯蔵庫を使う。余剰核物質の半分は適切に保管されているが、残りの保管作業が終わるまでには、あと十年はかかるとみられている。テロリストに狙われるおそれもあり、作業のスピードアップが急務だ。

 ―退役原潜の解体もスピードが遅いですね。

 解体待ちで使用済み核燃料を積んだままの原潜は八十隻余り。単純計算で原子炉は約百八十基に上る。それほど数多くの「チェルノブイリ原発」が係留されているということだ。極東地域でもし事故が起これば、広域的な海洋汚染や魚を媒介にした食物連鎖の危険もある。

 ―ズベズダ工場の原潜解体と保管を担う企業体「ダリラオ」の幹部は、解体作業の安全性を強調していましたが…。

 私は造船所に入ったことがあるが、その幹部の意見にはとても賛成できない。解体のためにいったん切断した「原子炉モジュール」は浸水や腐食の危険性がより高くなる。

 ―日本への要望は?

 日本の支援は非常に役立っている。まだ手付かずのカムチャツカは、ウラジオストクよりひどい状態だ。日本に近いし、ぜひ解体事業に参加してほしい。

 ―今後、ロシアの核解体は確実に進むでしょうか。

 楽観視できない。特に戦略核弾頭はモスクワ条約で二〇一二年までの削減目標を定めているが、米国側にはその後、条約を延長する意思がない。

 ―非戦略核兵器についてはどうでしょうか。

 米国は欧州諸国に配備しており、英国、フランス、中国も持っている。こうした国々が削減しないと、ロシアも進められない。米国は非戦略核兵器の削減に興味を持っていないようだ。

 ―北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大はロシアに影響を与えていますか。

 東方拡大に伴って、サンクトペテルブルクやモスクワがNATO諸国からの近距離核ミサイルの射程に入るおそれがでてきた。軍人は政治的距離ではなく、ミサイルの射程で判断する。いずれ核軍縮の向かい風になる可能性はあると思うが…。

 ―ロシアが臨界前核実験を繰り返しているとのニュースが世界に流れています。

 米国は包括的核実験禁止条約(CTBT)を批准していないし、インドやパキスタンは調印すらしていない。特に米国が批准しない限り、ロシアも備えをしないわけにはいかない。

 ―一九九八年に広島を訪れた時の印象は?

 悲劇のスケールの大きさと奇跡的に復興した姿に驚いた。核兵器全廃のためにさらに努めなければと自分を奮起させた。ロシアは八〇年代の五分の一まで核兵器を減らしている。世界で最も核軍縮に貢献した国だ。モスクワ条約でもロシアは核弾頭の削減目標を千個と提案したが、米国が応じず引き上げられた。世界に「ヒロシマ」を伝え、軍縮を進めたい。

 <プロフィル>米カーネギー国際平和財団モスクワセンターの核問題研究員やロシア下院の軍縮・国際安全保障に関する小委員会の主任顧問などを歴任。ロシアの核問題の第一人者として知られる。


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