ウクライナはかつて、核大国ソ連の一部として多くの核兵器が配備されていた。このためソ連崩壊に伴う独立後は、一時的に世界第三位の「核保有国」となった。しかし一九九六年にはすべての核兵器体系を手放し、「非核保有国」の道を選んだ。その選択は、人類の未来に明るい希望を与えた。が、一方でウクライナ領土内に建設されたソ連時代のチェルノブイリ原子力発電所は、八六年の炉心溶融事故のため、今も暗い影を投げかけている。広島世界平和ミッション(広島国際文化財団主催)の第四陣一行は、昨年十月十九日から九日間のウクライナ滞在中に二つの側面に接した。核をめぐるこの国の現状を、関係者とのインタビューを交えて報告する。(文・岡田浩一 写真・野地俊治)
■ウクライナの核年表
1977年 8月 チェルノブイリ原発1号機(80万キロワット)が臨界
78年 5月 同1号機が営業運転開始
86年 4月 チェルノブイリ原発4号機が炉心溶融を起こし爆発
86年10月 1号機が再稼働。87年12月にかけて2、3号機が順次再稼働
90年 7月 「国家主権宣言」で非核三原則の順守を表明
91年10月 チェルノブイリ原発2号機のタービン室で火災が発生して運転停止
91年12月 ソ連の崩壊でウクライナが独立
92年 5月 第一次戦略兵器削減条約付属議定書に調印▽戦術核兵器のロシア移送完了
94年11月 核拡散防止条約(NPT)に批准
96年 6月 戦略核兵器のロシア移送完了
96年11月 世界の主要国(G7)との協定により、チェルノブイリ原発1号機を運転停止
97年 4月 G7がチェルノブイリ原発の石棺安定化と新石棺建設を進める石棺実施計画に合意
2000年12月 チェルノブイリ原発3号機が運転停止
04年 8月 フメルニツキ原発2号機が送電開始
同10月 ロブノ原発4号機が送電開始
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