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■特集 ウクライナ編 核の現状
非核国への選択 大統領の一言 議会動く '05/1/10


 「核兵器廃絶はわが国の大きな国際貢献だ」。ウラジーミル・ゴルブリン大統領補佐官(65)=国家保障問題担当=はそう言って胸を張った。他の政府高官も市民も核兵器廃絶を「誇り」として、被爆地広島からの訪問者に語った。しかし、その道は決して平たんではなかった。

 ウクライナには一九九一年の独立当時、ソ連時代に配備された、主として米国を狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)百七十六基と核弾頭千二百四十個が残っていた。米ロに次ぐ規模だった。

 ウクライナ最高議会は既に九〇年の「主権宣言」の中で、核兵器を「受け入れない、造らない、入手しない」の非核三原則をうたっていた。

 「核兵器の管理はソ連国防省が握っていた。独立後に核兵器が残れば、ウクライナが国際社会に大きな責任を負うことになるが、国内には管理を保証できる専門家がいなかった」。旧ソ連時代から三十余年、核兵器問題にかかわってきたゴルブリンさんはこう振り返った。

 実際、九三年には一つの核ミサイルに搭載した弾頭温度の異常上昇が判明。九五年には核ミサイルの安全性を裏付ける「保証期間」も、大半が切れることになっていた。

 さらに国際的には、米ロと、ソ連から独立したウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンで結ばれた第一次戦略兵器削減条約(START―1)付属議定書の批准期限が迫っていた。議定書には「核拡散防止条約(NPT)への加盟」などが定められていた。

 しかし、最高議会の一部には「核兵器の廃棄は独立を脅かす」という主張も根強くあった。クチマ大統領は九四年十月、混乱する議会でこう演説した。「核兵器が自宅の隣にあったらどうだ。それでも保有したい者は手を挙げなさい」

 強権政治を批判されながらも、核兵器の危険を強調した大統領の「歴史的」な演説によって、議会が一部留保していた付属議定書の内容を全面的に採択。「わが国は核兵器廃絶への道をまい進することになった」と、ゴルブリンさんは振り返る。

 国内に配備された核弾頭は、九六年六月末までに順次ロシア内の核施設へ運ばれた。核ミサイル基地も二〇〇一年中にすべて破壊され、二度と使えないようになった。

 国内にはなお、核による再武装を主張する政治家が一部にいるという。だが、国中を揺るがせた昨年末の大統領選挙でも、核保有をめぐる再軍備は論点にならなかった。

 ゴルブリンさんは「わが国の核問題への態度の根底には、チェルノブイリの惨禍がある。原子力の正しくない利用が被害を生むことを知っている」と説明。「どのような政治状況になっても近い将来、核軍備する事態にはならない」と力説した。

【写真説明】ソ連時代の中距離戦略核ミサイルの模型が展示されているペルボマイスク核ミサイル基地跡。キューバ・ミサイル危機の際、ソ連がキューバに持ち込んだとされる


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