■保有への固執は条約違反
弁護士ら法律の専門家でつくる非政府組織(NGO)の国際反核法律家協会会長として、スリランカから国連本部へ駆けつけた国際司法裁判所(ICJ)の元判事クリストファー・ウィラマントリーさん(78)に、再検討会議の問題点などについて尋ねた。
―ICJは一九九六年、核兵器使用について「一般的には国際法違反」とする勧告的意見を出しました。核軍縮に消極的な核保有国の姿勢をどう見ますか。
大量殺りく兵器の使用禁止は、大昔から各国の法律に盛り込まれており、国際法上も確立されたルールだ。それなのにまだ、核兵器保有に固執する国があるのは、おかしいとしかいいようがない。
―今回の再検討会議でも、核保有国の核軍縮への関心は薄いようです。
NPTは核兵器を削減して廃絶することを最終目標としている。新たな核兵器の開発を進めるなど核保有国の態度は、明らかな条約違反である。特に米国が主張する核兵器による抑止は、うその論理だ。非核兵器国への核の先制使用も辞さない米国の戦略は、防衛より使用を前提としているとしか思えない。
―新たな核兵器保有国も現れそうですが…。
既存の核保有国がルールを守らないからだ。核大国が条約を守らないのに、誰が守ろうか。核大国が姿勢を改めれば、国際的な核管理の流れが生まれてくるはずだ。それが今回の再検討会議の最も重要な課題だ。
―被爆国日本の市民は何をするべきでしょうか。
九六年の勧告的意見の際には、日本から百万単位の署名がICJに届いた。保管のために部屋を確保したほどだ。それがとても効果的だった。ICJにもう一度、現在の情勢に添った勧告的意見を出すよう、署名とともに要請するなどの方法もあるだろう。
―今後はどのような活動を計画されていますか。
今年十一月にはスリランカで南アジアの核問題を話し合う国際会議を開く。会場に原爆展を設ける計画で、証言をしてくれる被爆者も探している。
<プロフィル>1926年、スリランカ・コロンボ生まれ。同国最高裁判所判事や豪州で大学教授などを歴任。91年から2000年年まで、ICJの判事を務める。03年から国際反核法律家協会会長。
【写真説明】「NPT体制の維持は核保有国の軍縮努力から」と力説するウィラマントリーさん
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