◆留学生の熱意が懸け橋
ミッション第六陣の最後の活動が、マサチューセッツ州ボストン郊外にあるハーバード大ケネディ行政大学院での平和授業だった。
その準備を請け負ってくれたのは、同大学院で行政学を学ぶ千葉県市川市出身の平野欧理絵さん(29)、広島県坂町出身の会社員児玉豊さん(39)、広島市西区で幼少期を過ごした土井秀文さん(36)の三人を中心にした邦人留学生だった。
「ヒロシマ・スピークス―21世紀の希望」。そう書き込んだちらしを、平野さんたちは当日まで、学生用の掲示板に張り付けるなどの作業に追われた。
児玉さんは昨年秋の倫理の授業で、トルーマン大統領が下した原爆投下の決断の是非をテーマに議論した。「日本の学校では経験しなかった議論。自分の知識不足を痛感した」と自省を込めて言った。
同大学院は米政府や関係機関で働く人材や政治家を多く輩出することで知られる。土井さんは「米国の将来を担う学生たちが、原爆投下の問題についてもまじめに考えていることを知って驚いた」と打ち明ける。三人のこうした経験が、平和授業実現への熱意につながった。
授業では、村上啓子さんが被爆体験を語り、木村峰志さんが原爆の被害を示すデータを基に語った。前岡愛さんは旅を振り返り、「原爆は六十年前の過去の出来事ではない。核兵器が再び使われる可能性は高まっています。ヒロシマについて家族や友人の一人でもいいから伝えてください」と涙声で訴えた。
授業を支えてくれた邦人留学生たちは「学年を締めくくる良い経験になった」と、メンバーとともに成功を喜び合った。
【写真説明】平和授業のちらしを学内の掲示板に張り出す平野さん(左)と児玉さん
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