◆折り鶴携え広島訪問へ
著名な芸術家や映画監督を輩出してきた私立ニューヨーク大学。マンハッタンのダウンタウンにある校舎の工房で、被爆者の証言と折り鶴づくりのワークショップを開いた。
参加したのは芸術科の大学生、大学院生の計九人。村上啓子さんと笹森恵子さんの証言に続いて、作業台を囲んだ。スティーブ・コラックさんは学生から折り鶴の折り方を教えてもらった。
この日の学生を含む十七人は二〇〇四年四月、ニューヨークの画廊でグループ展「ピース・バイ・ピース(作品でつくる平和展)」を開いた。昨年一月から一カ月にわたって、漫画「はだしのゲン」の英語版を読み、原爆記録映画を見てヒロシマを学んだ。その後、平和をテーマに絵画や彫刻、写真作品などを制作した。
今年は新しい作品を作り八月十三―二十日、広島市中区の旧日本銀行広島支店でグループ展を開く。期間中、学生は市内でホームステイをしながら、原爆資料館などを見学して「原点」に触れる。折り鶴づくりは事前のヒロシマ学習の一環で、学生が広島を訪れた際、平和記念公園(中区)内の原爆の子の像にささげる。
指導しているのは、同大の非常勤教授で芸術家の広島市東区出身の砂入博史さん(33)=写真右下。きっかけは米中枢同時テロだった。「教室でアフガニスタンの空爆について意見を聞いたら、賛成とも反対とも答えなかった。考えがなかったからです」とその時を思い起こす。
祖父母は被爆。母は当時、祖母の胎内にいた。米国の大学へ留学するまで、広島で育った。古里では平和や戦争が身近な問題だっただけに、核超大国の学生の無関心さに危機感を抱いた。
「芸術は他者とコミュニケーションをとれる手段。もっと平和への考え方を深めたうえで、メッセージのある創作活動をしてほしい」。その願いからグループ展を授業に取り入れた。砂入さん自身も八月十七日から約一カ月間、広島市現代美術館(南区)で、平和をテーマに個展を開く。
ワークショップを終えた大学三年のスザンナ・タイシューさん(21)は「被爆者の体験を受け止め、自分の行動につなげる責任を感じた。今日、原爆について深めた知識を、自分の彫刻に生かしたい」と意欲を燃やしていた。
【写真説明】ニューヨーク大学の学生たちと一緒に折り鶴づくりに取り組む村上さん(左端)、木村さん(左から2人目)、笹森さん(右端)
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