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■特集 被爆60周年 伝える 若者へ 世界へ
国境を超えて '05/6/30

 ◆「廃絶」無関心に直面

 心の傷 共感し合えた

 貧困・宗教対立も壁◆

 浅井所長 広島世界平和ミッションに加わり、海外でヒロシマを伝えた手応えや印象は。

 大学生の花房加奈さん(19) イギリス、フランス、スペインを巡り、ヒロシマはまだ十分に伝わっていないと感じた。平和活動に取り組んでいる人々でさえ、被爆者の証言や写真に触れた経験がない人が目立った。被爆者が現地を訪ね、肉声で語り掛けることが大切だ。

 被爆者の福島和男さん(73) 中国の北京大では、大学院生から南京大虐殺について厳しく問い返された。学生から「原爆は日本の侵略戦争を止めさせた」との意見も出た。中国の人々は「核兵器は自国を守る」と信じこんでいるようだ。廃絶には無関心だった。

 直野助教授 ヒロシマを伝える困難さがありましたか。

 被爆者の森下弘さん(74) ボスニア・ヘルツェゴビナのスレブレニツァでの交流会で、ショックを受けた。被爆体験を話し始めたら、民族紛争で夫を殺された女性たちが「原爆のことはもう知っている。いま欲しいのは生活の糧だ」と席を立った。居残った女性に「私も母を殺された」と告げると、態度を一変させて聞いてくれた。体験を伝えるとは、命を奪われた悲しみを語り、共感し合うことと悟った。

 大学院生の佐々木崇介さん(22) インドで若者を対象に聞き取り調査をした結果、大半が核兵器保有に賛成だった。言論統制の厳しいパキスタンでは、廃絶を訴えるのは命懸けになる。貧困、宗教対立もまさに、平和を脅かす問題。核廃絶のみを訴えても国民の耳には届かない。

 被爆者の松島圭次郎さん(76) 日本国内でも被爆体験が風化しているのに、米国はなおさらだ。原爆の脅威が現実のこととして伝わっていない。若者に語り掛ける努力を続けよう。核汚染が進む核兵器関連施設周辺では、反核・平和団体が活発に運動していた。彼らの声が全米に広がってほしい。

 被爆者の村上啓子さん(68) 米国の若者は涙を流して証言を聞いた。でも、その涙はどこへ行ってしまうのか? 日本でも同じ。証言を聞いた人は数え切れないのに、世の中の動きにはつながっていない。若者に本気で継承する気がないからではないか。

 翻訳家の井下春子さん(73) 韓国では日本に弾圧された悲劇の方がヒロシマの悲劇より身近だ。現地では「なぜ広島に原爆が落ちたか」という問いが、歴史認識問題につきまとう。日韓共通の歴史認識を持つには、相当な年月がかかる。個人的には良い関係が築けるが、国としての意見を語る場面ではナショナリズムが強まり、話がかみ合いにくかった。

【写真説明】海外で体験を伝える難しさを振り返る被爆者の森下さん


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