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被爆当時と地表がほぼ同じ高さの慈仙寺跡。62年間転がったままの墓石を、広木さんは見詰める(撮影・坂田一浩)
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心の中で手合わせ清掃
平和記念公園(広島市中区)には、被爆当時の中島地区とほぼ同じ高さの地面がある。原爆で壊滅した街で信仰を集めた慈仙寺の跡だ。直径約五メートル、深さ四〇―七〇センチほどのくぼみがポッカリ空く。倒壊したままの墓石が歳月を重ね、うっすらとこけむしていた。
西区の広木昭代さん(80)は一昨年から週二回、市シルバー人材センターの一員として公園を清掃している。慈仙寺跡を担当する日は、特に丁寧にほうきで掃き清める。「この場所に来ると、心の中で思わず手を合わせる」。背筋をピンと伸ばし直した。
一九五七年から三年ほど、公園の造成に携わった。夫が経営する土木会社が倒産し、失業対策事業に応じた。公園の約十二万平方メートルのでこぼこの土地をならす、きつい作業だった記憶がある。「平和記念公園は復興の証し。少しでもきれいにして、訪れる人に平和の尊さを感じてほしい」と願う。(山成耕太)