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【天風録】慰霊モニュメント |
'10/8/1 |
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真ちゅうの折り鶴が舞う。地球を表す中央の輪に大きな1羽、後ろの世界地図には999羽。熱線で溶けた瓶や皿、学生服のボタンを台座に埋め込む。きのう広島市西区の己斐小で慰霊のモニュメントが除幕された▲あの日、おびただしい数の被爆者が焼けただれた姿で逃れてきた。たどりついた学校で、母の名を呼びながら息を引き取っていった中学や女学校の生徒たち…。校庭には幾筋もの溝が掘られ、亡きがらを荼毘(だび)に付す煙が何日も続いた▲「あの時学校で何が起きたのか知ってほしい」。当時、通っていた元在校生の願いを形にしたのがモニュメントだ。卒業生に広く募金を呼び掛け、建設費を賄った。世話人のほとんどが70歳代。「歴史の証人にならなければ」と、せきたてられるような思いだったという▲先週、ドイツ・ポツダム市では広島と長崎から贈られた被爆石を埋め込んだ慰霊碑が市民の手で建てられた。米国のトルーマン元大統領が65年前、原爆投下命令を出した宿舎の前。こちらも悲劇の始まりを永久に忘れてはならぬ、との決意の表れだろう▲己斐小では6日、子どもたちが参加してモニュメントの前で平和の集いを開く。65年の歳月を経て先輩から後輩へ。込められた思いは、きっと受け継がれていくに違いない。
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