中国新聞社
'13/8/4
【社説】平和市長会議 国際政治動かす道筋を

 首長たちの連帯で国際社会をどう動かすか。広島市で開幕した平和市長会議の総会で何より問われるべきテーマだ。

 核兵器廃絶の目標年とする2020年まで7年しかない。開会式では会長の松井一実広島市長が「都市のネットワークを最大限活用し、廃絶へ向けた国際世論を喚起したい」と述べた。

 目標としてはその通りである。だが現実には廃絶へ向けた国際的な機運がなかなか高まらないのも確かだろう。

 そこをどう打開するのか。あす打ち出される「ヒロシマアピール」や、今後4年間の行動計画の中身に注目したい。

 現在、市長会議に加盟しているのは約5700都市。総人口は約10億人に達する巨大な非政府組織(NGO)である。

 米ソ冷戦で核兵器の使用が現実味を帯びていた1982年に発足し、輪が広がってきた。その流れは冷戦終結後も変わらず、10年前に「2020ビジョン」を掲げた頃から、加入が急増してきた経緯がある。

 利害や思惑が絡み合う国家間の核軍縮交渉ではらちが明かない。住民の安全を何より守るべき自治体の力で前に進める。広島・長崎両市の思いが着実に広がってきたからであろう。

 それだけに「量から質」への転換を図ることは重要だ。加盟都市数だけを誇るのではなく、具体的な廃絶への道筋をどう提案できるかが問われる。

 今回の議題はどうだろう。まずは運営体制の充実が大きなテーマとなりそうだ。つまり組織力の強化である。

 これまで会費がない分、気軽に参加する自治体も多く活動の熱意に温度差があった。今回は年2千円の納付金を求めて運営費に充てることを提案する。少額にも見えるが、当事者意識を高める狙いがあるようだ。

 もう一つのポイントは欧州や米国など地域ごとの「リーダー都市」を指定し、支部としての活動の促進を図るという。

 こうした改革には、2年前に会長に就任した松井市長の意向が反映されている。実現すれば一定の活性化にはなろう。

 一方で、さらに議論を深めてもらいたいのは2年後に迫った核拡散防止条約(NPT)再検討会議への対応を含め、行動計画をどう練り直すかだ。

 4年前に長崎市であった前回の総会は核兵器禁止条約の早期交渉入りなど廃絶への具体的な手段を記す「ヒロシマ・ナガサキ議定書」を、翌年の再検討会議に採択させることを最大の目標に据えた。オバマ米大統領が「核兵器なき世界」を掲げたことで機運が高まってもいた。

 しかし議定書は採択どころか提案もされずじまいだった。そうした経緯を踏まえ、仕切り直しが求められよう。禁止条約をどう前に進めるか。核兵器の非人道性を核保有国にどう認めさせるか。そうした点が新たな行動計画では焦点となろう。

 被爆国の足元も当然問われる。政府は依然として核抑止論に固執する。4月のNPT再検討会議の準備委員会で核兵器の不使用声明に賛同しなかった。廃絶を願う首長の側からも、もっと声を上げるべきであろう。

 特に活動していない「名ばかり都市」もある、という指摘は気掛かりだ。総会の一環として開かれる国内加盟都市会議の場でも考えてもらいたい。


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