そこに立つと、修学旅行生も外国人も皆、上空に目をやる。何もない。空が広がっているだけ。それでも上を見る。68年前に生じた、忌まわしい火の玉を思うからだろう。原爆ドーム近くの爆心地。訪れる人はきょうも絶えない▲少し歩いたところに架かる相生橋。投下目標とされたT字形の橋に、きのう朝、約600人が集まった。8時15分、一斉に空を見上げ、犠牲者を悼むというイベント。若者ら参加者は言葉少なに立ちつくした。何を感じ、誓ったろうか▲平和記念公園にある、国民学校教師と子どもの碑の前では同じころ、慰霊祭が開かれていた。遺族や教員、児童が花をささげたのは、傷ついた子を抱きかかえ、天を仰ぐ女性教師の像。絶望と怒りに満ちたまなざしを向ける▲ランニングシャツ姿の青年は上を向いて、こみ上げる涙をこらえているのだろうか。ことしの「ヒロシマ・アピールズ」ポスターは、夏の日の人物像を墨で表現した。大切な人を奪われた痛み、悲しみがにじむようだ▲あの日を知っている広島の空。見上げて、思い巡らせたい。8月に限らず、いつだって。想像しさえすれば、誰にでも分かる。核兵器はいらぬ、許せぬと。