■悲劇の克服を訴え
広島国際文化財団主催の広島世界平和ミッションで、南アフリカ共和国とイランを訪ねた第一陣の報告会が五日、広島市中区の市女性教育センターであった。ミッションの活動に関心を寄せる市民約百人が集まり、メンバー五人の現地報告に耳を傾けた。
最初に広島経済大助教授の藤本義彦さん(39)=広島市西区=が、三月下旬から三週間余をかけて訪問した両国の概要や活動内容を、写真を示しながら説明した。
特に化学兵器による被害を受けたイラン・サルダシュト市での体験に触れ、「世界の各地で苦しんでいる人たちは『ヒロシマ』というだけで共感してくれる。被爆の惨状を伝える以上に、相手の苦しみを知ることが重要だと感じた」と話した。
被爆者の寺本貴司さん(69)=広島県大野町=は帰国後、修学旅行生たちへの証言活動で「平和は人をいじめないなど身近なことからつくりあげるもの」と伝えていることを紹介した。
薬剤師の津谷静子さん(49)=東区=は、今年八月六日に広島訪問を希望しているイランの化学兵器被害者について言及。「被爆地には彼らと悲劇を共に乗り越えていく役割がある」と受け入れに意欲を示した。
「お互いに学び合うことで相手に対する尊敬が生まれ、敵対心は徐々に減っていく」。広島外語専門学校生の小山顕さん(25)=東区=はこう強調した上で「教育や文化はそのきっかけづくりになるのでは」と語った。
安佐北区出身の津田塾大四年の荊尾(かたらお)遥さん(21)=東京都小平市=は帰国後に、両国で知り合った友人から届いた電子メールの内容を紹介。「現地で平和交流するだけでなく、その後も対話を続けていくことが大切」と締めくくった。
続いて五人は各テーブルに分かれ、参加者と質疑応答で交流した。
報告会は、ミッションの経験を多くの市民と共有しようと、「広島世界平和ミッション」を支える市民の会(柴田幸子代表世話人)などが主催した。
【写真説明】南アフリカとイランでの体験を話した広島世界平和ミッション第一陣の報告会
   
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