回復傾向の個体も確認
瀬戸内海沿岸の住民らに参加を呼び掛け、海の生物調査を続けている住民グループ「環瀬戸内海会議」(阿部悦子代表、65団体)は26日、今年の調査結果の集計をほぼ終えた。住民が地元の海に触れるきっかけづくりを狙う調査の地点は、11府県で計100カ所を超え、過去最多となった。
子どもでも参加でき、経年変化をみる資料にもなるよう調査方法と指標動物を統一。イボニシ、カメノテ、アサリの個体数と、マガキやムラサキイガイ、アマモなど10種類の生息密度を調べた。
2001年に始め、今年で3回目。「100カ所の調査は百カ所の渚(なぎさ)の保全につながる」と100カ所を目標に掲げた。沿岸各地の構成団体などが夏場に実施したほか、参加した住民が自主的に別地点を調べたケースもある。これまでに報告があったのは中国、四国、近畿、九州の計116カ所(11府県)。36カ所(8府県)だった昨年の3倍以上に増えた。
現時点で97カ所の調査結果を集約した。比較的きれいな水に生息するフジツボ類のカメノテは「多い」が半分強の50カ所、貝類のオオヘビガイは14カ所。富栄養化の指標とされるムラサキイガイは「多い」が7カ所、「いない」が半分弱の47カ所だった。
カメノテは1980年代以降、広島湾奥部ではほとんど確認されなくなったとされる。環瀬戸によると、ここ数年で回復傾向にあり、今回の調査でも広島市南区似島の3カ所で「多い」と確認されたほか、しばらく確認されなかった南区元宇品で2個体見つかるなどの変化もみられた。
海岸部は埋め立てやコンクリート護岸で人が近づけないなどの制約があり、調査したのは比較的自然が残る地点が多い。このため環瀬戸は今後、さまざまな条件を加味しながら分析する予定。集約担当の小西良平さん(55)=備前市=は「1年の結果では評価が難しい。継続的に調べ、変化を見守りたい」と息の長い取り組みを目指す。
環瀬戸は、埋め立て、海砂採取、産業廃棄物持ち込みの全面禁止を盛り込んだ瀬戸内法改正を目指し、署名活動も展開。阿部代表(54)=愛媛県今治市=は「参加者の生き生きした表情から、あらためて人と海が普段は切り離されていると感じる。生物調査を通し海を身近に感じることは、瀬戸内法への問いかけにもつながる」とみている。
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