昨年十一月にあった津田塾大の大学祭で、学内外の若者が「それぞれの平和」について意見を交わす公開討論会を企画し、コーディネーターを務めた。全体テーマには「対話」を選んだ。第一陣で訪ねた南アフリカ共和国で、その重要性を実感したからだ。
アパルトヘイトの傷が残る南アフリカは、保有していた六個の核弾頭を自主的に廃棄した国でもある。「武力に頼ることなく、悲しい対立の歴史を対話と和解の心で乗り越えようと努力する人々の姿が、ヒロシマと重なった」
世界の非核兵器地帯をテーマに書き進めていた卒論は、いつしか南アフリカが主題になった。「人間の意志によって、核兵器廃絶は実現できる」。現地で実感したことを学術的に補強して論文を提出した今、あらためてそう思う。
知り合った大学生、研究者らとは現在も、平和教育や核問題について電子メールで意見交換を続ける。「一過性の旅で終わらせたくない。個人のつながりを大切にし、二度と悲劇を繰り返さないために努力し合いたい」
大学祭などで体験を伝えるだけでなく、ミッションで芽生えた南アの人々とのつながりに、確かな手応えを感じている。
【写真説明】大学祭での公開討論会を企画した仲間たちと「平和」をテーマに意見を交わす荊尾さん(中)(2004年11月4日)
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