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■特集 パキスタン編 核の現状と展望
使わぬ関係築きたい カシミールの解決が不可欠 '05/4/11

 戦略研究所・東アジア担当所長/ファザル・ラーマンさん(46)に聞く

 政府系研究機関「戦略研究所」の東アジア担当所長で、アジア太平洋地域の安全保障に詳しいファザル・ラーマンさん(46)に、パキスタンの核政策について聞いた。

 ―パキスタンが核兵器開発に乗り出すようになったのはなぜですか。

 パキスタンは、常にインドという脅威から自国をどう守るかを考え続けてきた。一九六五年の第二次印パ戦争敗北後、インドとの戦略バランスを保つため、どれだけの犠牲を払っても核開発をすると決めた。

 七四年にインドが初の核実験に成功した時、パキスタンは南アジアの非核地帯化をインドに提案したが、相手にされなかった。本格的な開発に乗り出したのは、そのころからだ。七八―八八年には、すでに保有能力を持ったが、公には示さなかった。

 ―しかし九八年に核実験に踏み切り、国際社会にアピールしました。

 その前にインドが実験したが、そのことを非難する国際社会の反応は鈍かった。残念ながら米国も日本も、パキスタンを脅威から守る手段を提供してくれるわけではない。しかもインドに抗議するより先に、パキスタンに「実験をしないように」との圧力をかけてきた。パキスタンには、信頼できる安全保障がなくなり、実験することで核保有国であることを宣言した。

 ―パキスタン政府の核拡散防止条約への考え方は?

 NPTは米ロ英仏中の五カ国にのみ保有を認める差別的な条約だ。核兵器の拡散を防止するという条約の精神には賛成できるが、署名をするなら、インドも共にすべきだ。南アジアの戦略バランスを考えたら、パキスタンだけ加わるわけにはいかない。

 ―核兵器が本当に平和を保ち、戦争防止に役立ちますか。

 核兵器を持っていればそれで攻撃されないということではない。核抑止力には限界がある。圧倒的な軍事力を誇る核超大国の米国でさえ、テロリストに攻撃された。しかし、非核国の日本でも北朝鮮を脅威に感じ、核武装論を唱える声があるのを知っている。

 ―南アジアから、核兵器廃絶を進めることはできませんか。

 一つの可能性としてはあるが、南アジア最大の国インドがその気にならないと無理だ。南アジアにとって、印パの核保有は不幸なことだ。持たないに越したことはない。が、今からなくすのは非常に難しい。

 これからできることは、核兵器を保有しながら信頼を醸成し、使わない関係をつくっていくことだ。そのためにはカシミール問題の解決が不可欠だ。国際社会はこの問題でもっとインドに圧力をかけてほしい。

 ―地域や世界の平和・軍縮に向けて、パキスタンが主導できませんか。

 世界平和をつくりだすには国際的な安全保障が必要だ。それなしにパキスタンがイニシアチブを取ることはできない。国際的な核軍縮は現在、進んでいない。むしろ米国が小型核兵器の開発に取り組むなど、新しい脅威を増やしている。国際社会は包括的で、しかも平等な関係において核軍縮を進めることが大切だ。

 《戦略研究所》73年、外務省のシンクタンクとして設立。平和、開発、安全保障などの分野を研究している。


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