兄が託す
被爆し、白血病からの回復を願って鶴を折り続けたことで知られる佐々木禎子さん(一九四三〜五五年)の遺影が二十五日、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(広島市中区)に登録された。二十六日から公開される。
禎子さんの兄で、福岡県那珂川町で美容院を営む雅弘さん(63)がこの日、追悼祈念館を訪れ、遺影を保存したCDを職員に託した。幟町小(中区)六年だった五四年秋、運動会のリレーで優勝した記念に撮影された写真で、鉢巻きに体操服姿で写っている。
雅弘さんはこのほか、昨年二月に八十七歳で亡くなった父繁夫さん、九八年に八十歳で死亡した母フジ子さん、被爆当日に死去した祖母マツさんの遺影も同時に登録した。雅弘さんによると、繁夫さんは原爆投下翌日、三次市から家族を捜しに戻って入市被爆し、禎子さんたちと雅弘さんは爆心地から一・六キロの自宅で被爆したという。
禎子さんの物語は映画や絵本となり、「サダコ」の名で世界に広まっている。その死を契機に級友たちが呼び掛け、五八年に平和記念公園(中区)の一角に「原爆の子の像」が完成。現在に至るまで各地から多くの折り鶴が届いている。
父の一周忌を終えたため登録することにしたと雅弘さん。「人を思いやる禎子の優しい心を多くの人に伝えていきたい」と話していた。
一昨年八月に開館した追悼祈念館には、九千七百八十人分(二十四日現在)の原爆死没者の遺影(名前だけも含む)が登録されている。「サダコ」の遺影を探す来館者が多いと雅弘さんが伝え聞いたことも、今回の登録につながった。
【写真説明】佐々木禎子さんの遺影の登録手続きをする兄の雅弘さん(左)
    
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