86歳宇根さんから25歳谷さんへ
半世紀にわたり広島市内各所にある原爆慰霊碑への献水供養を続ける広島市南区、宇根利枝さん(86)とともに、ボランティアグループ「たのしい和」会長の自営業谷安啓さん(25)=同区=が二十八日、平和記念公園内の碑に水を供えていた。八月六日、宇根さんに代わり、初めて平和記念式典の献水に参加する。
この日、二人は原爆死没者慰霊碑や原爆供養塔など九カ所を約二時間かけて回った。岩手県から宇根さんに届いた水をコップに注ぎ、碑前に供えた。「安らかに眠ってください」。祈りをささげた。碑を巡りながら宇根さんから聞く被爆体験は、谷さんにとって新鮮だ。「学ぶことばかり」
谷さんが始めたきっかけは、二年前、知人の勧めで何げなく見た宇根さんを特集した一本のビデオテープ。「たった一人で続ける姿に心を打たれた」。すぐに宇根さんに申し出て、公園清掃などのグループの活動に献水も加えた。
仕事の合間に車を走らせ、献水や水くみをする。過去二年とも、市内に約百二十カ所ある碑のほぼすべてを巡り、今年も既に百カ所近くを訪れた。「後継ぎ」。谷さんは最近、宇根さんからそう呼ばれる。
宇根さんは三十年近く続けた式典の日の献水を今年から谷さんに任す。「宇根さんの思いを受け継ぎ、自分も体が動く限り続けたい」
【写真説明】宇根さん(左)とともに慰霊碑に水を供え、手を合わせる谷さん
    
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