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原爆死没者の遺骨を発掘した土木会社社長 住田吉勝さん '04/7/30

 遺族へ果たす島民の責任

 肌を焼く炎天下に黙々と、はけの柄で土を削る。手を止めては持ち替え、今度は毛先で地表を丁寧に払う。茶褐色の頭骨がだんだん見えてきた。

 湿って崩れやすいから、すぐには掘り出さない。表面が乾くのを待つ。「石や土じゃない。相手は人骨じゃけえの」。掘り出した土はふるいに掛け、小さな骨片も見逃さない。

 広島市南区の似島。原爆死没者の遺骨を捜す市の発掘調査に、請負業者として損得抜きで名乗りを上げた。島に生まれ育った責任だという。

 五月二十七日に始まった発掘の前日、県警にとことん、助言を求めた。人体骨格も勉強した。それでも最初は、木の枝も骨に見えた。歯の付いた下あごが初めて見えたときは冷や汗が出た。次第に、埋められた体位も予測できるようになった。

 眠りから覚めた骨は、何かを語り掛けてくる気がする。きつく歯を食いしばった頭骨には「『なんでこんなとこに埋められんといけんのか』と言われとる気がした」。首を横に振ると、ふだんはぶっきらぼうな声が少し湿った。

 原爆投下直後から多くの負傷者が運ばれた似島。家族の消息を捜す遺族から「うちの肉親が埋められとるはずだ」と言われてきた。何も返せなかった自分。でも今は「ええがいにさしてもらいました、ゆうて言える」。土を埋め戻した現場で、大きくひとつ、息を吐いた。(加納亜弥)

【写真説明】発掘に使った道具を手に「やって、えかった」と調査を振り返る住田さん


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