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被爆地の医師、歩み集大成 原爆病院25年の石田さん '04/7/30

 回想や論文 3部作完結

 広島赤十字・原爆病院で長年被爆者医療に携わった医師石田定さん(78)=広島市南区=が、活動記録や回想、論文をまとめた「原爆病院 下巻」を出版した。上、中巻に続く三部作の完結編。石田さんは「一人の医者の歩みを通じて被爆地の足取りや苦悩をくみ取ってほしい」と願っている。

 石田さんは広島市民病院を経て一九五七年、原爆病院に赴任。被爆者の治療や研究を手探りで進めた。国へ被爆者対策の充実を要望する活動にも取り組んだ。内科部長を務め、八二年に退職した。

 昨年夏に出した上巻は着任から六八年まで、同年暮れにまとめた中巻は六四年から始めた県外在住の被爆者検診や、七一年以降七回訪れた韓国での被爆者治療について記した。

 下巻は六八年から退職までを扱い、病棟新築などの施設整備、七六年に広島、長崎両市長が国連事務総長に提出した原爆被災報告書の作成にかかわったことなどを記述。「被爆者医療は君たちがつくっていくものだ」と激励を受けた故重藤文夫院長の思い出話も収録し、「被爆者における白血球の染色体異常」など研究論文も載せた。

 石田さんは二〇〇二年一月から八月まで、食道がんや肝機能障害で計三回入院した。家族から今のうちに被爆者医療の記録をまとめるよう勧められ、退院後の同年九月から執筆、編集に取り掛かった。

 石田さんは「二十五年間に及ぶ原爆病院勤務で多くの被爆者の死、苦悩に向き合った。不十分な国の支援や原爆への怒り、被爆者のための医療を摸索した日々を書き留めることは私の務めです」と話している。

 B5判、三百五十八ページ。百十部を自費出版し、知人や医療関係者に配る。

【写真説明】「原爆病院 下巻」を自費出版した石田さん


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