関連ニュース
毒ガス証言活動を本に 大久野島の「歴史研」発行 '04/7/31

 元資料館長 講座や体験詳しく

 旧陸軍による大久野島(竹原市)での毒ガス製造の実態を調べている同市の市民団体「毒ガス島歴史研究所」(山内静代代表)が、元工員で島にある毒ガス資料館長を務めた同会顧問村上初一さん(78)=同市忠海床浦=の活動の証言集「伝言」(A5判、152ページ)を発行した。

 村上さんは、一九八八年に開館した資料館の初代館長に就任してから証言活動を続けている。数少ない証言者が高齢化する中、島の戦争遺跡の説明や体験談を記録しようと、会員が四年がかりでまとめた。

 七章で構成。第一章では一九二九年に毒ガス製造が始まり、終戦と戦後処理に至る歴史を概観。第二―七章は、二〇〇〇年四月から〇一年十一月にかけて村上さんが講師となって島内を巡りながら六回開いた「ガイド養成講座」の証言をエリア別に載せている。

 島南東部にあった「技能者養成所・事務所周辺」の章では、村上さんが十四歳から三年間、養成工として学んだ内容や秘密主義だった戦時下のエピソードを紹介。工場が集中していた島南西部の「三軒家工場群周辺」では、漏れ出た毒ガスで多くの工員が健康をむしばまれた可能性を指摘している。

 写真や地図も数多く収録。朽ちつつある毒ガス貯蔵庫跡や発電所跡などの戦争遺跡の写真が、保存の必要性を訴える。

 編集を中心で担った会員の松田宏明さん(50)=同市床浦=は「読んだ人が島を訪れ、今の時代を考えるきっかけになればうれしい」と期待する。村上さんは「二度と過ちを繰り返さないように歴史を知り、平和の尊さを学ぶために役立ててほしい」と話している。

 三百部印刷し、一冊八百円。同会事務局(山内さん)TEL0846(29)1206。

【写真説明】大久野島での証言記録をまとめた「伝言」。表紙の写真は、戦前からあるモミの木と戦争遺跡として保存された消火栓(左下)


MenuTopBackNextLast

ホーム