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「急性症状」80%超す 原爆症認定訴訟、広島の原告ら調査 '04/8/2

 4分の3、爆心地付近へ 多重被曝の様相

 共同通信社は一日、原爆症認定を国に求め広島など全国十一地裁で係争中の被爆者百四十六人を対象にしたアンケート結果をまとめた。回答を寄せた九十二人のうち、脱毛や嘔吐(おうと)など急性放射線障害とみられる症状を被爆当時に発症したケースは、爆心地からの距離に関係なく、80%を超えていることが分かった。

 被爆後に捜索や救援などのため、爆心地近くに入った原告は七十一人(77%)に上る一方、放射性降下物である「黒い雨」を浴びた人も43%を占めた。

 急性症状は一グレイ以上の高線量の放射線を浴びた場合に発症するとされる。爆心地近くに出入りしたことで、爆発時の初期放射線に加え、放射性降下物や誘導放射線に多重被曝(ばく)していた可能性がアンケート結果から浮かび上がっている。回答者のうち六十四人は広島で、二十八人は長崎でそれぞれ被爆した。平均年齢は七二・四歳。

 脱毛や嘔吐などの症状があったのは、二キロ以内で被爆した五十四人のうち四十四人。二キロ以上の遠距離被爆者三十三人のうち二十八人を占め、その大半が爆心地付近に入っていた。

 このほか、救援活動などで原爆投下後の市街地に立ち入り被爆した「入市被爆者」の五人全員が「発症した」と回答した。

 二キロ以内で被爆した人の83%が爆風や熱線などで負傷。遠距離被爆者の負傷率は36%だった。

 一方、全体の約40%が焼け跡に残っていた水や食べ物を口にし、28%が爆心地付近で救援活動や後片付けに従事した。

 被爆後に「健康状態が全く変わった」とする人が64%。被爆直後から体調悪化に苦しめられているとした人が39%おり、四十年以上、症状に苦しめられている人が70%を占めた。

 原爆症認定申請の理由は「病気が原爆によるものだと国に認めてもらいたい」が84%。「医療費や健康手当のため」の17%を大きく上回った。

 国の認定基準については、約90%が「厳しい」と回答。裁判に踏み切った理由をみると、「国への憤りや怒りから」「原爆の恐ろしさを訴え、核廃絶につなげたい」が約60%を占めた。

 <アンケートの方法>

 日本被団協をはじめ、広島県被団協(坪井直理事長)と、もう一つの広島県被団協(金子一士理事長)、長崎原爆被災者協議会(葉山利行会長)、東京都原爆被害者団体協議会(藤平典会長)など被爆者団体や弁護士の協力を得て、原告百四十六人にアンケートを送付し、郵送などにより回収した。

 ●クリック 原爆症認定

 原爆投下時に広島、長崎両市や周辺地区にいて直接被爆したケースや、2週間以内に爆心地付近に立ち入った場合(入市被爆)などに被爆者健康手帳が交付される。このうち原爆の放射線による病気や治癒力低下のために治療が必要な場合は、厚生労働省が原爆症と認定し、月額13万7840円の医療特別手当が支給される。2003年度末で全国の被爆者手帳所有者約27万人のうち、原爆症認定は0・82%の約2270人。「認定基準が厳しすぎる」と批判がある。


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