原爆が投下された八時十五分、犠牲者の冥福を祈り参加者が黙とうする平和記念式典の会場に、遺族代表の広島市安佐北区白木町、保育園園長坂川豊和さん(38)と、こども代表の同市東区、幟町小六年平尾緒美さん(12)がつく平和の鐘の音が七回鳴り響いた。
坂川さんは救援活動で被爆した祖父を七年前に亡くした。「戦争のない世界を子どもたちに引き継ぎたい」。三人の息子たちや保育園の園児たちの顔が思い浮かんだ。鐘をつく代表に決まってから、多くの被爆者に声をかけられた。「みんなの願いが世界に届いてほしい」
平尾さんは、被爆の影響による白血病からの回復を願って鶴を折り続けた佐々木禎子さんの母校に通う。「同じ十二歳で亡くなった禎子さんをとても身近に感じる。もう二度とあんな過ちを繰り返してはいけない」と誓いを新たにした。
鐘をつく直前、坂川さんは、緊張した面持ちの平尾さんに笑顔で声をかけた。世代の違う二人が鳴らす鐘の音色は静かにこだましていた。
【写真説明】平和な世界の実現を願って鐘をつく平尾さん(左)と坂川さん
    
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