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平和宣言で訴えた「憲法擁護」賛否 被爆地と全国 落差 '04/8/7

平和宣言で訴えた「憲法擁護」賛否 被爆地と全国 落差

 あの日から五十九年たった六日、広島市の秋葉忠利市長は平和宣言で「憲法擁護」を訴えた。が、国政の舞台では改正は政治日程に上りつつある。平和記念式典や慰霊式の会場などに集った百人に賛否を聞くと、五割が改正に反対し、九条改正には七割が異を唱えた。世論調査で過半数が改正を容認するすう勢と、「祈りの日」のヒロシマに、憲法をめぐる落差が色濃く出た。

 「被爆都市の市長として当然」。西区福島町での「8・6朝の集い」に参加した広島市佐伯区の病院職員山下真琴さん(26)は、平和宣言をそう受け止める。「今の憲法にはかつて暴走し愚かな戦争に走った政府を、再び暴走させない力がある」とみる。

 「改正すべきでない」と答えた人は五十人、九条改正への反対は七十人に上った。柳井市の無職田中正史さん(71)は、平和記念式典で「平和憲法を順守する」とした小泉純一郎首相のあいさつに対し、「今年も被爆者との対話集会に出ない首相の言葉は空論に聞こえた」と言う。

 両親と弟二人を原爆で失い、自身も被爆した安芸高田市の無職朝原梅子さん(76)は「被爆者として九条は変えられない」。父親を弔った中区の日本郵政公社での慰霊式で、つらい思い出をたぐり寄せながら語った。

 一方、憲法改正に賛成した人は二十八人、九条改正への賛成は十九人だった。

 中区の「中島地区ゆかりの人の集い」に参加した神奈川県相模原市の無職藤井正伸さん(68)は「自衛隊をちゃんと定義するべきだ。国を守る軍隊がないのは国とは言えない」と強調する。安佐南区の無職男性(81)は「日本は経済大国。テロや紛争の解決に積極的にかかわってほしい。自衛隊を軍隊と位置付けるべきだ」との考えを示した。

 憲法が禁じる集団的自衛権の行使に触れるのでは―。そんな見方もある自衛隊のイラク多国籍軍入り。「憲法を改正してでも派遣続行を」と答えたのは十二人で、「ただちに撤退すべきだ」が五十七人を占めた。残りの人は「様子を見て考える」などの意見だった。

 南区での広島郵便局の慰霊祭に出席した遺族で中区の会社員原川道夫さん(59)は「大量破壊兵器も見つかってないのに『平和目的』といわれても」と撤退を主張する。

 動員学徒の慰霊祭で広島県府中町のパート山中せつこさん(62)は「イラクのためになるなら」と派遣続行に賛成しながら、「武器を使うのはだめ」とくぎを刺した。


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