▽原爆投下2日後、爆心から2キロで採取
広島市に原爆が投下された二日後、市内で採取したヒイラギなどの木の葉と枝の標本を呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)が所蔵していることが二十四日、分かった。原爆資料館(広島市中区)は「日付と場所が特定できる植物標本は大変珍しい」と話しており、海事館は八月五日から開催する企画展「原爆と呉」で初公開する。
標本は、ヒイラギと、種類不明の広葉樹などの葉が計二十五枚と、枝が三本。原爆の熱線で表面が焦げた葉もある。海軍調査団員の北川徹三技術中佐(一九〇七〜八三年)が四五年八月八日、爆心地から約二キロ離れた広島市東区二葉の里二丁目の広島東照宮境内で採取した。
北川中佐は八日から被爆調査をしており、原爆の影響を調べるため植物を採取したとみられる。昨年秋、東京都内の遺族から原子雲のスケッチ図や被災写真などとともに同館に寄贈され、現在は保管庫で管理している。
標本が傷みやすい上、広島大などでの放射能測定を検討しており、企画展では写真で展示する。原爆資料館学芸担当の豆谷利宏主任は「うちには植物標本が十点程度あるが、どれも日時などが不明。専門家が採取した標本でもあり、貴重な資料だ」と話している。
海事館の戸高一成館長は「実物展示できないのは残念だが、今後は原爆資料館とも相談して保存や展示方法などを検討したい」とする。企画展は八月三十一日まで。未公開の寄贈品を含む約三百点を展示する。
    
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