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広島の民家 被爆時計を保存 '05/7/30

 広島市上空で原爆がさく裂した一九四五年八月六日午前八時十五分直後の時刻を指したまま壊れた時計が、同市南区内の民家に現存していることが二十九日、分かった。

 爆心地から約三キロ、南区上東雲町の松井昭三さん(77)が、被爆当時から住む自宅で所有している。玄関脇の倉庫にある木製の掛け時計は縦五十五センチ、文字盤の直径が約二十センチ。日本製で、製造年は分からない。原爆の衝撃で家屋が揺れ、かもいから落下。針が午前八時十六分を指したまま止まったという。

 被爆三、四日後に松井さんが元の場所に掛け直し、そのまま六十年間、ほこりをかぶり続けてきた。六十年を経た今は長針がずれ、八時十七分を指している。

 掛け時計のねじを巻くのが家庭内での役割だった松井さん。「この時計は私の生活の一部。捨てるにしのびなかった」と話す。被爆者健康手帳を持つが、あの日を境に時を刻むのをやめた「相棒」と同様、自らの体験は黙して語らない。

 原爆資料館(中区)が所蔵する被爆した時計は、腕時計や懐中時計を含め計十七点。貴重な資料の一つだが、松井さんは「当分、今のままそっとしておきます」。

【写真説明】被爆直後の午前8時17分を刻む掛け時計を見上げる松井さん


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