▽消えた町 証言基に復元
病院や商家の町並みも、そこで暮らす家族の笑顔も声も、一瞬のうちに消えた。原爆が奪い去った爆心直下の町、広島市細工町(現在の中区大手町一丁目)。その被爆前の姿がこの夏、最新のコンピューターグラフィックス(CG)によって、よみがえった。
デジタルハイビジョン作品「ヒロシマ・グラウンド・ゼロ(爆心地)」。広島県内の四大学や映像制作会社など産学官でつくる「爆心地復元映像制作委員会」(田辺雅章主管)による編集は大詰めを迎え、CGの微修正などの作業が続く。
収録した元住民たちの証言を重ね合わせ、今年秋、六十分間の作品が完成する。見る人に、まるで路地や家の内部を歩いているかのように思わせる三次元の動画となる。それは、失われた町や人への挽歌(ばんか)であり、愛するものを原爆に奪われた住民たちの告発でもある。
同制作委員会は、作品を十一月にも広島市内で一般公開する。
    
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