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【天風録】出会いの力 '08/8/6
「子どもが、ヒロシマに行ってみたいと言いだしたんです」。今年初めて広島市が市立大の運動場に設けた無料キャンプ場。その中に、兵庫県加古川市から子ども二人と訪れた男性の姿もあった▲神戸市に住んでいた時、阪神大震災で家が半壊。避難所生活を体験した。「つらかったが、かえってよかった」と振り返る。以前は他人と接するのが苦手だった。それが変わった。多くの人と出会い、助けられたからという▲東京都町田市の被爆者で、詩人でもある橋爪文さん(77)から届いた本を思い出した。六十一歳で英国留学し、欧州各国も旅した様子をつづった「フーモギの105日」(かまくら春秋社)。フーモギは疑問符をひっくり返した自称で、何にでも興味を持つからという▲そんな橋爪さんも、広島で被爆した十四歳の時から「他人とは分かち合えない心の痛み」を胸の底深く抱え、ほとんど封印していた。転機は十四年前、ニュージーランドの今は亡き作家との出会い。「なぜ原爆の話を避けるのか」と問われたからだ。今年も現地の「ヒロシマ・ナガサキ・デー」に招かれて語る▲きょう8・6。鎮魂の祈りとともに、国内外から多くの人たちをヒロシマに迎える日でもある。ここからは、どんな出会いが新たに生まれるのだろうか。


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