平和ミッションの各陣が帰国すると毎回、市民向けに報告会が開かれた。主催したのは、七十―四十歳代の女性十五人でつくる「広島世界平和ミッション」を支える市民の会(柴田幸子代表世話人)。
同会は、ミッション事業が始まって間もなく発足。市民に活動内容を広めたり、寄付を募ったりして、文字通り陰で「支えて」きた。
六月二十一日の午後。広島市中区の市女性教育センターに集った柴田さんらは、事業の締めくくりに、ミッションメンバーのリポートをまとめた文集の編集作業に追われた。「報告会で言いっぱなし聞きっぱなしになるのはもったいない」と文集作りに取り組んだ。
柴田さんは約一年半を振り返り、「メンバーとの出会いから私たちも学び、国内にいては知り得ない問題に気付かされた」と強調。「地球規模で平和について考え、次世代に伝えていかなくてはと思うようになった」と感慨を込めて言った。
【広島世界平和ミッション】
昨年1月1日付本紙で、ミッションの趣旨を伝え、被爆者ら市民の参加者を募った。応募者は最終的に86人に達した。その中から書類と面接などで各陣5〜4人、計29人を選んだ。
うち被爆者は9人、中国、ロシアの留学生など広島と韓国在住の外国人5人もメンバーに加わった。年齢は80歳から18歳まで。
訪問国=地図参照=は計13カ国。昨年3月に第一陣が南アフリカ共和国に向けて出発し、最後の第六陣は5月に米国から帰国した。
滞在期間はそれぞれ3週間から5週間余。訪問先の各地で、原爆被害の実態や「平和と和解」のメッセージを伝えた。一方で、戦争やテロの被害者、被曝(ひばく)者らと交流。原爆投下や核兵器保有に対して意見の異なる人たちとも対話を重ねた。
メンバーは帰国後もそれぞれの体験を生かして活動。第一陣のイラン訪問を契機に、同国の毒ガス被害者らとの交流が市民レベルで広がっている。
メンバーや記者が訪問国での体験を語る学校での「出前授業」は8校、約1100人に達した。写真展も開き、約3000人が見学。会場ではメンバーが見学者に説明した。
ミッションへの寄付金は個人・法人合わせて536件、計531万円余。バイオリン奏者の辻井淳さんは、チャリティーコンサートで支援してくれた。
【写真説明】手作りの文集を編集する柴田さん(右端)ら市民の会メンバー
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