前田さん ―にぎわい創出へ実験
坪井さん ―音楽が流れる“都”に
氏原さん ―ドーム前接岸に迷い
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都心のまちづくりの具体的な取り組みに耳を傾ける参加者
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藻谷 平和大通りにも、全国から木を集めている場所があるそうですね。
坪井 東詰めに「被爆者の森」があり、北海道から沖縄まで四十七都道府県の木が植えてある。すべての県に被爆者がおり、早く言えばカンパのように、木を贈ってもらったわけだ。
前田 行政だけでなく、多くの人がかかわっているのも、大事にされている理由だと思う。
藻谷 一瞬にして生きるものの命が否定された地に木を持ち寄り、大切に育ててきた結果として緑の多い町になった。同じ緑でも、平和公園は議論が必要になっている。いろんなことをやりたい時、どんな支障が起きているのでしょう。
前田 「水の都構想」に携わっているとき、シンボルゾーンとして原爆ドーム周辺が挙がり、コンサートをやりたいとか、喫茶空間もいいのではとの意見があった。でも結局、「大きな声で言いにくい空気があるね」で終わってしまった。
藻谷 例えば、ここでドームを眺めながらコーヒーを飲んでくつろぐ人が日常的にいるのは、平和の象徴として尊いのか。逆に聖域としてどうなのか。思わず、考え込んでしまいますね。
氏原 私たちもドーム前の雁木に船を着けていいのか迷う。お客さんはあそこに着けると感動する。でも、人がどう感じるのかわからない。
坪井 平和公園を音楽の都にしたい。園内に音楽が流れれば、平和を願う力にもなると思う。さくや規制で公園を縛るのは、人を信じられないからだ。芝を汚す人間がいたら、それを正す市民の力がいる。行政だけに頼ったら駄目だ。何をするにも意見の対立はあるが、それを乗り越えられる考えは絶対にある。私は、民族、政治、経済、宗教を乗り越えて平和の道を見つけたい。
(会場から)無職高本祐さん(70)=佐伯区 公園内にノーベル平和賞受賞者ら平和をこしらえた人たちの記念碑や像を建てるなどして、幅広く平和を学べるようにしたらどうか。公園周辺は、夜は怖くて一人では歩けない。夜も人が訪れるようにするため、街灯を整備する必要がある。
前田 夜を明るくすると、まちのにぎわいにもつながる。時間を区切った社会実験を試みるなど、世論の動きを見極めながら、少しずつ動いていけばいい。
藻谷 死者の冒涜(ぼうとく)はあってはならないが、犠牲になった人たちが喜ぶような生かし方も考えねばならない。夜の人通りは、治安の向上にもつながる。被爆から半世紀以上がたった。世界中から広島に来てもらうための呼び水として、街路整備に公共投資してもいいと思う。