ヨーロッパ

カン平和記念館(フランス)

(09年1月13日)

◆学芸部歴史担当 クリストフ・ブイエ

 フランス北西部にあるカン平和記念館は、ノルマンディー上陸作戦から44年目の1988年6月、当時のミッテラン大統領が開館した。20世紀の歴史を中心に「第二次大戦」「冷戦」「平和」の3つに分けて展示。戦争に直面した人間に焦点を当て、来館者に地球の将来を考えてもらう。

 年間の来館者数は約40万人。5割は20歳未満の若者だ。国内の小中学生の歴史教育に活用されており、教師のための研究コースや各学年に対応した教育資料なども提供している。

 「第二次大戦」の展示では、戦争が世界規模で広がり民間人をも巻き込んだ様子を紹介。来館者は薄暗い部屋で威圧的なヒトラーの声を聞き、写真、宣伝ポスターなどが当時のフランスの日常生活や敵への抵抗、抑圧の歴史を示す。企画展で、ノルマンディー上陸作戦の兵士の手紙や日記も展示。戦闘中に兵士が感じた幸福や苦しみを物語る。

 「冷戦」コーナーでは、アルビオン高原にあった核ミサイルや米国の原子爆弾の模型が、軍拡・核兵器開発競争の狂気を表す。恐怖のバランスで東西両陣営は成り立っていた。そして、ベルリンの壁の一部が「冷戦終結」を明示する。

 最後に、大きな窓のある空間で世界中の平和文化や平和構築を紹介。平和とは戦争だけでなく暴力がない状態であることを訴える。また、世界情勢に合わせ「紛争防止国際会議」などの公開イベントも随時開催している。

住所 Esplanade Eisenhower-BP 55026 14050 Caen Cedex 4 France
電話 +33-2-31-06-06-44
ホームページ http://www.memorial-caen.fr
休館日 年内は月曜日と25日が休み。1月は1、4-26日が休み。
入館料 15.50ユーロ(約1950円)季節によって違う。その他割引有り

(2008年12月22日朝刊掲載)

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非暴力や軍縮、平和構築について考えるコーナー


2002年にオープンした平和を考える空間。6つの円錐塔では、世界各地の平和文化を紹介している


第二次世界大戦のコーナーの最初にある「崩れた平和」。1930年代にナチズムが台頭した様子がわかる


第二次世界大戦のコーナー。ノルマンディー上陸作戦の地図を展示している