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見つめ直すヒロシマ 6日、63年目の「原爆の日」 '08/8/5

 広島への原爆投下から六日で六十三年になる。核兵器廃絶への道筋はいまだ見えないなか、被爆地のメッセージは国境を越え、広がりを見せる。老いた被爆者に、人類史上初の核兵器が与えた被害とは何か。長い歳月を経てあらためて見つめ直す動きも目立つ。語り継がれる「あの日」の記憶と記録が重みを増す。

 現在、核をめぐる世界情勢の懸念の対象は北朝鮮とイランである。米国は北朝鮮の核計画の申告を受け、テロ支援国家指定の解除の動きを見せている。一方、イランは国連制裁後も、ウラン濃縮を続ける。

 両国の出方の鍵を握る米国は、核拡散防止条約(NPT)未加盟の核保有国インドとの原子力協定を発効させる動きを見せる。核廃絶への方向性は、定まらない。

 その超大国で注目の動きがある。今年十一月の大統領選に挑む共和、民主両党の大統領候補がともに「核兵器なき世界」の理念に支持を表明している。

 唯一の超大国となった米国で核軍縮を口にするリーダーが出る可能性が高い。広島市の秋葉忠利市長も平和宣言で、核兵器廃絶は国際社会の「多数派の意思」とし、それに耳を傾ける新大統領誕生への期待を述べる。

 国内では四月、国の新基準による原爆症認定審査が始まった。申請が大幅に増え、認定数は五百件を超えた。各地の原爆認定訴訟では、高裁段階でも原告の被爆者が勝訴。国の連敗は十を数える。今も続く放射線後障害がクローズアップされた年として、記憶されるだろう。

 全国の被爆者は三月末現在、二十四万三千六百九十二人。一年間で八千百四十二人減り、平均年齢は七五・一四歳と、昨年よりも〇・五五歳上がった。

 歳月がたっても、よわいを重ねても、老いた被爆者は自身の体験を基に核兵器廃絶を語れる。昨年九月から開催中の全米原爆展のため、既に十二人の被爆証言者が海を渡った。わだかまりを抱えつつ、原爆投下国の市民に体験を語る重さ。鎮魂と祈りの日を迎えるに当たり、その胸中にも思いをめぐらせたい。(黒神洋志)


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