中国新聞オンライン
中国新聞 購読・試読のお申し込み
サイト内検索
「ゲン」の勇気を母国にも チェルノ被災者、中沢さんと対面 '09/7/27

 ▽ヴァシレンコさん、ウクライナ語に全10巻翻訳中

 チェルノブイリ原発事故で被災したウクライナの詩人ヴァシレンコ・ニーナさん(73)が26日、被爆地広島市を訪れ、漫画「はだしのゲン」の原作者中沢啓治さん(70)=埼玉県在住=と対面した。ヴァシレンコさんは「はだしのゲン」全10巻をウクライナ語に翻訳中。8月6日には完成した第1巻を携え、平和記念式典に出席する。

 チェルノブイリ原発事故の起きた1986年、ヴァシレンコさんは南西75キロのマカレビッチ村で小学校教諭をしていた。一帯は事故後、汚染が深刻な被災地「第3ゾーン」に指定された。住民の多くが白血病やがんを患い、夫もがんを発症。2000年に61歳で死亡した。

 「ゲン」とは91年に出合った。日本の知人から、ロシア語版の第1巻を贈られ、被爆後の広島で生き抜くゲンの姿に感動した。ロシア語が分かる子どもや住民にも回覧し、「ヒロシマからエールをもらった」と反響があった。

 学校退職後の04年、ウクライナ語への翻訳作業に取りかかる。「ウクライナ語なら子どもも理解しやすい。事故後の障害に苦しむ人にも読んでほしい」と決意した。

 今回、広島には「はだしのゲン」全巻の英訳の完了祝賀会に招かれた。中沢さんと原爆ドーム周辺を散策し、ヴァシレンコさんは「ヒロシマとチェルノブイリは一本の鎖でつながっている。ゲンからは勇気をもらった」と感謝の気持ちを伝えた。中沢さんも「原発事故後に苦しむ多くの人に、懸命に生きるゲンの姿を伝えてほしい」と励ました。(東海右佐衛門直柄)

【写真説明】「ゲンをウクライナで広め、人々を勇気づけたい」。原爆ドーム前で中沢さん(左)と語るヴァシレンコさん


MenuTopBackNextLast