日本

ひめゆり平和祈念資料館(沖縄県糸満市)

(08年9月16日)

◆学芸員 前泊(まえどまり)克美

 1945年3月23日、米軍が沖縄上陸作戦を開始。沖縄本島は住民を巻き込んだ地上戦の場となり、20万人余りの命が奪われた。沖縄師範学校女子部・沖縄県立第一高等女学校の教師・生徒240人で構成する「ひめゆり学徒隊」も沖縄陸軍病院に動員され、戦場で負傷兵の看護にあたり、戦闘に巻き込まれて教師13人、生徒123人が亡くなった。

 学徒生存者らは「戦争の実相を伝えることが教師・学友の鎮魂につながる」との思いで、平和資料館の建設に取り組み、89年6月23日、ひめゆりの塔のそばに「ひめゆり平和祈念資料館」を開館した。「財団法人沖縄県女師・一高女ひめゆり同窓会」が運営する私設博物館で、昨年9月に総入館者数が1500万人を超えた。来年、開館満20周年を迎える。

 女師・一高女のこと、戦争にいたる経緯、戦場での様子などを、壕(ごう)から収集した学徒の持ち物、生存者の証言映像や手記、遺影や壕の実物大模型などを通して紹介している。開館以来、館内で生存者が戦争の実相を伝えてきた。2004年には次世代に伝わりやすくするために展示をリニューアル。生存者が80歳を超えた今、後継者の育成も始めている。

 生存者らは「また戦争の足音が聞こえ始めた」と警鐘を鳴らすと同時に、一人一人が戦争や平和について考えれば、戦争への動きを止めることができる、と信じている。当館はその考えを深めるきっかけとなる場でありたい。

住所 沖縄県糸満市伊原671の1
電話 098-997-2100
ホームページ http://www.himeyuri.or.jp/
休館日 なし
入館料 300円、高校生200円、小中学生100円(団体割引有り)

(2008年9月8日朝刊掲載)

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遺影と生存者の証言を展示した第4展示室。亡くなった学徒たちの鎮魂の部屋だ(ひめゆり平和祈念資料館提供、撮影・平良暁志)


「第1展示室・ひめゆりの青春」 1930年代から長引く戦争により、次第に軍事化した学校の様子を展示(ひめゆり平和祈念資料館提供、撮影・平良暁志)


「ひめゆり第2展示室・ひめゆりの戦場」 病院壕のジオラマや証言により、戦場でのひめゆり学徒の様子を紹介(ひめゆり平和祈念資料館提供、撮影・平良暁志)