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【社説】6ヵ国協議 核検証合意どう具体化 '08/7/13

 北朝鮮の完全な核廃棄の実現へ果たして十分な検証体制といえるのだろうか。きのうまで北京で開かれた六カ国協議首席代表会合は、核申告に対する検証の原則などで、大筋の合意にこぎ着けた。

 国際原子力機関(IAEA)の関与が決まった点などはそれなりに評価できるだろう。しかし、北朝鮮がIAEAをどこまで受け入れるかは不透明である。具体的な実施方法についても決まっていない。

 三日間の協議では(1)核施設への立ち入り(2)核技術者らへの聞き取り(3)関連資料の追加提出―の三原則が必要との認識で一致。必要に応じてIAEAの助言、協力を得ることでも共通の認識に達した。具体的な検証となると、細部を詰めていない不安が残る。

 IAEAは、かつて寧辺に査察官を派遣し、現地情報にも詳しい。核廃棄の最終の第三段階に向けては、現在の第二段階でいかに厳格な検証の仕組みをつくれるかが鍵を握る。その意味で、組織もスタッフも充実しているIAEAには助言、協力にとどまらず、検証の主体としての役割を期待したい。

 そのためには北朝鮮が無条件に受け入れることが必要だ。核検証の見返りとして求めたエネルギー支援で、十月末までの実行完了の約束を今回の協議で取りつけてもいる。

 もともと北朝鮮の申告の中身は「完全かつ正確」に程遠いものだった。核兵器の保有数や、製造施設の場所など肝心な点に触れていない。核爆弾の原料であるプルトニウムの抽出量もあいまいな点が多い。ウラン濃縮疑惑やシリアへの核拡散疑惑についても全く記述がないなど、不十分なままだ。

 米国が示したテロ支援国家指定解除の発効まで一カ月を切った。実績を残したいブッシュ政権は、交渉ペースを速めたいだろうが、足元をすくわれるのではないか。安易な妥協は将来禍根を残すことにもなる。

 エネルギー支援では、日本は拉致問題の進展がなければ、参加しないとの基本方針をあらためて示している。韓国などから批判も出てきたが、どうだろう。北朝鮮が拉致の再調査を約束して一カ月たつのに、具体的な進展はないままだ。北海道洞爺湖サミットの首脳宣言では拉致問題の早期解決が盛り込まれた。こうした国際的な世論を背景に、日本政府は毅然(きぜん)とした姿勢を貫いてほしい。


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