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【天風録】丹下さんとコルビュジエ '08/8/3
炎天下、平和記念公園を歩き回り、ここにたどり着くとほっとする。原爆資料館のピロティ。柱が林立する、吹き抜けの一階部分のことだ。親子連れや若者もひんやりした日陰でくつろいでいる。風が通ると汗もひいていく▲戦後間もなく行われた平和公園の設計コンペで一位をとった案の骨格部分である。建築家の丹下健三さんがまだ駆け出し時代に手掛けた。ただ、当時の人にはかなり斬新なデザインだったようだ。中国新聞の記事にも「一階が柱ばかりの奇妙な建物」と紹介されている▲そんな資料館とよく似た建物の写真や模型を見た。広島県立美術館で開かれているル・コルビュジエの展覧会だ。箱を柱で持ち上げたような別荘や集合住宅。ピロティを提唱し、世に広めたのはコルビュジエという▲外と隔たりのない、誰でも招き入れるような空間。丹下さんはコルビュジエに若いころから傾倒し、アイデアを取り入れた。人々が集うのを意識した柱の高さや間隔も、快適な寸法にこだわったコルビュジエに通じているようだ▲資料館の設計には、神社の高床式倉庫など日本の建築法も取り入れたという。ピロティで安らげるのは、そんな太古とつながる発想もあるからだろうか。もうすぐ「原爆の日」。ここで一休みする人も増えてきた。


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