日本

ちひろ美術館(東京都練馬区)

(09年3月27日)

◆学芸員 松方路子

 絵本画家いわさきちひろ(1918ー74年)の没後の1977年、ちひろが22年間暮らした東京都練馬区の自宅にいわさきちひろ絵本美術館として開館した。「子どもの平和と幸せ」「絵本文化の発展」の2つの理念を掲げた。

 開館20周年の1997年、ちひろの両親が暮らした長野県松川村にも安曇野ちひろ美術館をオープンした。この2館で「世界中の子どもたちに平和と幸せを」と願ったちひろの原画約9400点と、29カ国の絵本画家188人による作品約1万7000点、絵本の歴史資料1000点を所蔵する。

 終戦後、信州から単身上京したちひろは「青春時代の若々しい希望を何もかもうち砕いてしまう戦争体験があったことが、私の生き方を大きく方向付けているんだと思います。平和で、豊かで、美しく、可愛(かわい)いものがほんとうに好きで、そういうものをこわしていこうとする力に限りない憤りを感じます」と後に語った。1951年に長男が誕生。母として、命を奪う戦争を許さず平和を願い続けた。

 ちひろは子どもを終生のテーマとし、生命力あふれる赤ちゃんや花、小動物を描く一方、戦争をテーマにした絵も描いた。1972年には、ベトナム戦争に抗議し「子ども」と題した作品を展覧会に出品している。

 当館は絵本、平和などをテーマにした講演会や出前授業のほか、中国や韓国などアジア各地で、平和への願いを伝える展覧会や平和交流にも取り組む。

住所 東京都練馬区下石神井4の7の2
電話 03-3995-0612
ホームページ  http://www.chihiro.jp/
休館日 月曜(祝日の場合は開館し翌平日休館)、年末年始、2月は冬季休館
入館料 高校生以下無料、大人800円(そのほか割引有り)

(2009年3月16日朝刊掲載)

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子どもの幸せを願って描かれた作品の多くがちひろの戦争体験に基づく。2ヵ月ごとに展示品を替える


いわさきちひろの最後の絵本『戦火のなかの子どもたち』の表紙  「戦火のなかの少女」(1972年、いわさきちひろ)


いわさきちひろの最後の絵本『戦火のなかの子どもたち』の表紙  「戦火のなかの少女」(1972年、いわさきちひろ)


「チューリップと赤ちゃん」(1971年、いわさきちひろ)


ちひろ美術館(東京)の外観


安曇野ちひろ美術館(長野県松川村)の外観