日本

杉原千畝記念館(岐阜県八百津町)

(09年5月22日)

◆八百津町役場地域産業課 山田和実

 「ミスター・スギハラ」と、ユダヤ人に尊敬されている元外交官杉原千畝(ちうね)氏(1900-86年)は、木曽川中流にある岐阜県八百津町で生まれ、育った。第二次世界大戦中の1940年夏、リトアニア日本領事代理だった杉原氏は、ナチス・ドイツの迫害を逃れたユダヤ人に、日本通過のビザを発給。約6000人の命を救った。

 当時の日本はドイツと同盟関係にあり、ユダヤ人支援はいわば裏切り行為。だが杉原氏は政府の意に反し「私の一存で彼らを救おう。処罰を受けても仕方がない。人間としての信念を貫かなければ」と決意。腕が腫れ、万年筆が折れても懸命にビザを書き続けた。

 杉原氏の勇気ある決断と功績をたたえ、八百津町は1990年に平和都市宣言。1994年に「人道の丘公園」を建設し、2000年に杉原千畝記念館を開いた。ひのき造りの館内では、杉原氏がビザを書いた領事館の執務室を「決断の部屋」として再現。「命のビザ」のレプリカや遺品などを展示し、杉原氏の生涯を映像でも紹介している。年間来館者数は約2万人。

 杉原氏を通して人権擁護と平和の尊さを学び、身の回りの小さな人権侵害や誤解が戦争や大事件に発展する、ということに気付く。どんな状況でも、柔軟さと勇気を持って発言し行動すれば、きっと社会に貢献できる。この記念館で、そのことをいま一度考えてもらえたら、と思う。

住所 岐阜県加茂郡八百津町八百津1071番地
電話 0574-43-2460
ホームページ http://www.daytonpeacemuseum.org/index.htm 
休館日 月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始
入館料 高校生以上300円、小中学生100円(団体割引有り)

(2009年5月18日朝刊掲載)

※写真はクリックすると大きくなります。  


「命のビザ」のレプリカ。実物は役場の町長室で厳重に保管している


杉原千畝記念館の外観。岐阜産の総ひのきを使って建築した。2階の展望棟からは八百津町を見渡せる


人道の丘公園のシンボルモニュメント。コンピューター制御でセラミック楽器による「平和を願う音楽」を奏でる


杉原氏がビザを書いた、リトアニア日本領事館の執務室を再現した「決断の部屋」への入口